予防医療のランダム・ウォーカー

内科専門医のblog 〜予防に勝る治療なし〜

【心臓病には安静が必須】という誤解を解く(2)

先日、心臓病の予防や治療後にこそ、運動が必要だというお話をさせていただきました。 内容を補足します。ちょっと専門的ですが、是非お付き合いください。 心臓病の運動療法(心臓リハビリテーションといいます)の効果は、 1、心筋梗塞の再発を予防する効…

【心臓病の今までとこれから】を考察してみます

心臓病には、さまざまなものがあり、大きくわけて 1、虚血性心疾患(急性心筋梗塞、狭心症) 2、不整脈(心房細動など) 3、弁膜症(僧帽弁閉鎖不全症、大動脈弁狭窄症など) 4、心筋疾患(拡張型心筋症、肥大型心筋症など) 5、大動脈疾患(大動脈解離、大…

【心臓病には安静が必須】という誤解を解く

先日あるメディアで、心臓手術後の70歳の方が心臓手術後に出歩くことが少なくなったと話をされていました。 心臓が悪いから、心配で家から出る気が起きなくなったそうです。 現在の医療では、心臓病には運動療法が欠かせません。 運動を継続して心肺機能を高…

医者が、上部消化管内視鏡(胃カメラ)検査を受けてみました

上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)を体験後の、リアルな声を残しておこうと思います。 備忘録的な内容になりますが、お付き合いください。 胃カメラは今回が初めてです。 検査をお願いしたのは、以前の職場でお世話になった、消化器内視鏡専門医のH先生です…

【動悸】は勘違いされています

日々の生活の中で、ちょっとしたタイミングに動悸がする方って、たくさんいらっしゃるんじゃないでしょうか。 動悸は、どきどきする、脈が速くなる、脈がとんでいる、などで表現されることが多いと思います。 動悸の原因は多くが不整脈ですが、動悸の時の心…

歯科クリニック受診(2)

今日は歯科クリニックの2回目の受診でした。 おおむね綺麗だが、細かい齲歯(むし歯)があると画像を見せられ、納得させられた上での治療。 説明が丁寧で、低姿勢。 患者さんを動かさないで、自分が何人もの患者さんの診察室へ。 一生懸命動く。 なんとなく…

睡眠時無呼吸症候群はsilent killer

睡眠時無呼吸症候群は、夜寝ている時に無意識に呼吸が停止する病気です。 熟睡できていないので、当然、日中に眠気がひどくなります。 寝てる間に鼻と口をふさがれているのと一緒なので、低酸素状態になり、苦しいので血圧も、心拍数も高く変動します。 典型…

働き盛りの死なない新常識

働き盛り死なない新常識、というテレビ番組をたまたまやっていて、流し見しました。 心臓病で死にかけた医師数名が登場し、それぞれの体験をまとめた内容でした。 高血圧や糖尿病などの生活習慣病を無視して働いた結果、急性心筋梗塞、脳梗塞などに医師自身…

断食ダイエット【Alternate Day Fasting (ADF)】

一日断食したら、翌日は好きなものを食べるという食事法が有効だ、という話です。 Alternate Day Fasting (ADF) と呼ばれる方法です。 健康でわずかに過体重の基準を超える60人を対象に、 参加者の半数を、2日間のうち最初の12時間は好きなものを食べ、その…

運動は70歳からでも遅くない

それまでの運動習慣がなくても、高齢になってからでも運動を始めることで、運動習慣のある熟練アスリートと同様に筋肉量が増やすことができる という論文を読みました。 1、何歳になっても、筋力の強化は可能。 2、ジムなどに通わなくても、日常生活の動作の…

骨粗鬆症予防・治療のメインも運動療法

骨粗鬆症は主に高齢女性に多く見られ、骨折の原因になります。 下肢の骨折を起こすと、歩行が著しく制限され、動けないことがさらに全身に悪影響を及ぼしてしまいます。 では、骨粗鬆症の進行を抑えるため、薬物療法を始めましょうという前にやるべき治療が…

良いクリニックの見分け方(2)

前回、クリニックを選ぶ基準について、ある先生がまとめたものをご紹介しました。 クリニックのドクターの年齢や、専門医資格の有無が大切だとまとめられていました。 では、これらを調べるにはどうすれば良いのでしょうか。 やはりクリニックのホームページ…

良いクリニックの見分け方

良いクリニックの見分け方、というのをまとめている先生がいましたので、簡単に要約してご紹介します。 その先生によると、 1、まず受診するなら、内科医であること。 現代医学では細分化されていて、昔みたいに適当な医療ではやっていけない。外科医が内科…

医学は思っているより厳密だった

今の仕事を始める前は、医学がここまで厳密、正確なものだとは思っていませんでした。 診察時に、雑誌に、危ない薬20種が載っていて、 「自分が内服している薬が入っていました。大丈夫でしょうか?」 「記事を読んで、勝手にやめたけど大丈夫でしょ?」 と…

がん検診・まとめ

がん検診を簡単にサマライズします。 最近の大きな変更点としては、胃がん検診が、40歳以上から50歳以上へと対象年齢が変更となり、今までのバリウム検査に加えて、胃カメラ(上部消化管内視鏡検査) が追加されました。 自治体によってはまだ内視鏡検査に対…

2018年、がんの統計

2018年の、がんの統計という資料を確認してみました。 各がんによる男性の死亡数は、 肺がん 55100人、胃がん 30000人、大腸がん 28700人、肝がん 17600人、すい臓がん 17600人、前立腺がん 9400人、食道がん 9300人 と続きます。 女性の死亡数は、 大腸がん…

過剰な糖のリスク

1日にからだに必要なタンパク質は、だいたい体重くらいを摂ればいいようです。 50キロの人なら50グラムのタンパク質を摂るという意味です。 ただし、トレーニングしている場合は、1日100グラムくらいは必要です。 タンパク質は腎臓の負担になるので、慢性腎…

細かいことは考えずに、手軽に運動するなら

前回のつづきです。 正確な負荷をかけた運動は、本来は採血検査の結果やその人のリアルタイムの生体情報(血中酸素濃度や血圧、心拍数、体温)を全て把握したうえでやるというのが、とても大事。という内容を書きました。 また、さらに心臓の機能、肺の機能…

ジムでの運動が不正確な理由・続

前回、運動生理学について書きました。 運動中のからだには、酸素と糖が必要で、それをうまく回すには肺の機能、心臓の機能、骨格筋の機能が重要だとまとめました。 もうひとつ、重要な要素について言及し忘れたので、今回はその話題にします。 その要素とは…

ジムでの運動が不正確である理由

なにも情報がない中、パーソナルトレーナーが勝手に運動を処方している現状は危険だ、という話です。 人間のからだは、運動し始めると、全身の骨格筋に大量のエネルギー(酸素と糖分=グルコースでつくるもの)が必要になるため、肺では呼吸をまずはゆっくり…

乱立するスポーツジムを見て、思うこと

街を歩くと、とにかく美容室とスポーツジムが乱立しています。 スポーツジムは24時間いつでも利用可能なものから、トレーナーがつくものまでさまざまですが、時間帯によっては利用者がほとんどいないような場所を多く見ます。 利用していない時間帯も場所代…

脂肪肝はハイリスク?

健診採血で肝機能障害を指摘されて、相談を受けることがあります。 今多いのが、腹部エコーの検査、もしくはCTで、脂肪肝を指摘されることです。 (正確には、脂肪肝の確定診断には、他の肝臓の病気を否定することと、肝臓に針を刺して組織を観察します) 脂…

歯科クリニック受診してきました

今日は予防医療を体験してきました。 数年ぶりの歯科クリニック受診になります。 クリニックを選ぶときに、自分が何を基準にしたかですが、いろいろ考えた末、自分と同世代で、かつ資格を持っている先生で、ひとりでやっているところを選びました。 【歯周病…

気管支喘息の治療は難しい

気管支喘息とは、気道という肺までの空気の通り道が狭窄してしまい、呼吸がしにくくなる病気です。 気道が狭くなったものを広げる効果を持つ薬剤を使用すれば、呼吸困難は比較的すみやかに改善します。 ただし、狭い気道を物理的に薬剤で広げて楽にはなるの…

加熱式タバコと肺疾患

紙巻タバコの代替として、加熱式タバコが急速に普及していますが、最近、加熱式タバコが原因と思われる急性好酸球性肺炎(精査中)の方を診療中に経験しました。 海外では様々な報告がニュースでも上がっています。 死亡例もあるとのこと。 国内の報告もいろ…

クリニックのフリーアクセスは損だと思う理由(2)

前回の内容のつづきです。 治らなければ同じクリニックを何度も受診するのが大切だ、と書きましたが、初回に診た医師が間違った判断をしてしまっていたら、その医師を何回受診しても意味ないのでは?という、リアルで本質を突いたご質問がありましたので、そ…

クリニックのフリーアクセスは損だと思う理由

よくある例を提示します。 2日前に熱がありa医院で採血をして感染症と言われ、抗菌薬を含む5種類の薬が処方されて飲んでいたが、良くならないのでbクリニックにきました。 a医院での採血の結果は詳しく聞いていないので、わかりません。と。 a医院には初診時…

医療用ウェアラブルデバイスの続き

医療用ウェアラブルデバイスの話題の続きです。 昨日も書きましたが、不整脈が相当数検知できるようになると、その多くが心房細動という不整脈になるはずです。 心房細動は脳梗塞、心不全、認知症の原因になるため、見つかった心房細動に対して、適切な医療…

Apple Watch による心電図管理の時代に

今回は予防の話題から少し離れて、唐突ですが、徐脈とペースメーカについてと、これから予想される社会の変化を考えました。 脈が極端に遅くなる状態を、徐脈といいます。 心臓は電気で動いていて、洞結節という名前のついた発電所で電気が1分間に約60回から…

大腸がんのリスク・予防要因とは

大腸がんにアスピリンが有効である可能性が高い、という話題を先日書きましたが、現在はっきりしつつある、大腸がんの食生活や生活習慣におけるリスク・予防要因について、まとめます。 大腸がんに関しては、 飲酒 → リスクが確実に上昇 肥満 → リスクがほぼ…