予防医療のランダム・ウォーカー

内科専門医のblog 〜予防に勝る治療なし〜

妊娠と薬物療法を考える

妊娠中の女性の薬物療法ほど、気をつかう診療はないのではないでしょうか。

 

慣れているのは産婦人科医と、一部のごく少数の内科医くらいで、自分を含めほとんどの先生方は基本的にかなり気をつかっています。

 

というのも、診察に来院した女性が妊娠中なのか、そうではないのか、ご本人でさえ、わかっていないことがあるからです。

 

 

知り合いの先生は、

 

ある若年女性のかたの診察時に、妊娠はしていないということをご本人に確認。

 

それを疑わず必要な薬を処方したらしいのですが、

 

ご本人が、薬を内服してしばらくしたタイミングで、心配になって妊娠検査を自分で行ったところ、陽性となったらしく、

 

もう飲んでしまったが、大丈夫か?どうすればいい?と迫られたことがあるそうです。

 

ただ、それ以降は、余程の特殊な事情がない限り、妊娠時にも比較的安全というデータがある薬しか出さないことにしたそうです。

 

 

【女性を見たら妊娠と思え】という言葉は、医学部で教育を受けた人間なら、もう嫌になるくらい聞いている言葉ではないでしょうか。

 

妊娠中の女性を診察させていただくことは、それほど頻繁に訪れることはありませんが、だからこそ細心の注意を心に決めていないと、外来が忙しくなればなるほど、見逃しが非常に怖いです。

 

ですから、事前の準備がとても大切です。

 

妊娠中には少しでもリスクがある薬の内服は、できれば避けたいものです。

 

薬というものは妊娠の有無にかかわらず、一定の副作用の可能性があるからです。

 

「リスクを考慮しても、薬剤を投与することにより得られる効果が病態の改善にとって必要である」と判断されたときのみ処方するという点では、通常の場合も、妊娠時も一緒です。

 

妊娠時に特別なのは、薬剤を必要としていない胎児にも薬剤が投与されることです。

 

胎児とっては、副作用のリスクのみ押し付けられることになりますから、慎重にならざるを得ません。

 

内服薬の有無にかかわらず、妊娠には特に原因がなくても、一定の割合で流産や先天異常の発生率が認められますが、

 

もしこういった状況になった際に、母親は、あの時あの薬をのまなかったら・・という後悔をずっと持ち続けることになってしまいます。

 

そのため、妊娠中の薬剤処方は特に、気をつけなければならないといつも思うのです。