予防医療のランダム・ウォーカー

内科専門医のblog 〜予防に勝る治療なし〜

2019-12-01から1ヶ月間の記事一覧

認知症は老化の最大の原因?

唐突ですが、高血圧は認知症の原因となります。 75歳以上の高血圧患者199名の臨床研究になります。 収縮期血圧(上の血圧)を130未満にしっかりと下げたグループと、145未満に甘めに下げたグループで、3年間の比較を行ったそうです。 結果、血圧を130未満に…

同じ方向を向いていないと、治療はうまくいかない仮説を考える

今回の内容には、まったく科学的な根拠はありません。 データも何も(たぶん)ありません。 データがあるのかどうか調べてもいないです。 あたりまえの内容なのですが、 手術であっても、薬物療法であっても、運動療法であっても、 治療を受ける側(患者さん…

週刊誌が薬を否定し続けるのはなぜ

先日、何気なく書店の本をざっと見ていくと、 危ない薬、薬は危険、危険な薬をのまされているといった特集が、複数の週刊誌で組まれていました。 週刊誌がこういう目的で記事を特集するのは、もちろん世の中にそういう記事を読みたいという需要があるからで…

【いい病院ランキング】は、なにが「いい」と判断されているのか

雑誌の【いい病院ランキング】はよく目にするものですよね。 いい病院ランキングはだいたいのものが、手術の症例数の多いところから1位、2位・・と並べて書いてあります。 症例数が多い病院には2種類あると個人的には考えています。 ひとつは正統派です。質…

【ISCHEMIA試験】を受けてこれから起こること

前回、循環器医としては非常に驚くべき内容の臨床研究である、ISCHEMIA試験について簡単に内容をご紹介しました。 2018年の日本の統計データでは、確かにカテーテル治療の件数は全体として減少していません。 カテーテル治療が必要な緊急カテーテル治療が約7…

狭心症のカテーテル治療は転換期を迎えている【ISCHEMIA試験】

今日は専門的な内容の話題になってしまいますが、 心臓疾患の多くを占めている狭心症という病気に対する認識が大きく変わろうとしている歴史の転換期を迎えていますので、ここに記しておきます。 動脈硬化が進展していくと、血管壁にはプラークなどの不要な…

クリニックも生き残りをかけているにしても、酷すぎる話

ちょうど一年前に、不整脈の治療をさせていただいた方から相談がありました。 不整脈の治療は、房室リエントリー性頻拍という名前の不整脈に対するカテーテルアブレーションという治療になります。 治療後には不整脈の再発はなく、それ以降は高血圧の治療の…

妊娠とインフルエンザ予防接種

妊娠中、妊娠をお考えの女性に、是非はやめにインフルエンザワクチン接種を考えていただきたくて、今回はこの内容にしました。 内容は簡潔にします。 妊娠初期のインフルエンザ感染は胎児に対するリスクがあり、また、妊娠中期、後期の感染はインフルエンザ…

C型肝炎治療薬【マヴィレット】

今回は、2018年度の国内で売れた薬剤についてみてみました。 第一位はマヴィレットというC型肝炎の薬です。 (2017年11月発売) このマヴィレットですが、グレカプレビルという薬剤とピブレンタスビルという薬剤の合剤になっており、 簡単にいうと、C型肝炎…

大腸内視鏡検査(大腸カメラ)はいつ受けるべき?

大腸内視鏡検査は、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)よりも受ける機会は少なくなると思います。 実際に、自分が今後受ける場合どういった基準で考えていったらよいのか、消化器外科専門医の先生に聞いてみました。 一般的に日常診療で大腸カメラをお勧めす…

内視鏡検査(胃カメラ)はピロリ菌除菌後にこそ必要

上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)についての話題です。 内視鏡でヘリコバクター・ピロリを除菌したあと、もう胃カメラの検査が不要だと思っている方がかなり多いことに、この一年で気がつきました。 胃の中に生息するピロリ菌の有無で、胃がんになる可能性…

近隣にコンビニがあると、動脈硬化は進展しやすい可能性

少し面白い研究がありましたので、ご紹介しようと思います。 自宅の近くにコンビニがあると生活は便利だが、動脈硬化の予防には良くない可能性があるという内容です。 約2700名の若年成人を対象に、自宅から3㎞以内の全ての食料品店・飲食店にコンビニやファ…

【未来予測】クリニックはこうなる

クリニックの未来予想をここに書き記し、将来また振り返ったときに、どの程度予測することができていたかを確かめたいと思います。 【内科・循環器内科】や【内科・消化器内科】といったように内科系で、自分の専門分野をうしろに追加して表示しているクリニ…

血圧手帳がなくなる日

自分の担当している外来は高血圧、コレステロール異常、不整脈、慢性心不全、虚血性心疾患の順に患者さんが多く、 特に、他の内科外来で血圧のコントロールがつかない方を担当させていただくケースが多いです。 一応循環器内科としていますが、外来ではその…

運動は高齢者にほど勧めたい

運動は高齢者ほど有効だと思います。 入院中の心臓病の高齢者の方には、ベッドサイドでの簡単な筋トレから開始することが多いです。 簡単な踵上げ、ゴムバンドやチューブをベッドの柵に結んで、手足で引っ張るようなトレーニングなどが代表的です。 ストレッ…

運動は暖かくなってから始めます問題を考える

運動療法は、さまざまなメリットがあり、副作用がないことが最大のウリです。 たくさんのメリットがあって、場合によっては内服薬を減らす効果もある運動をなかなか続けられないのは、どうも以下の理由があるようです。 理由1、季節に四季がある。 理由2、単…

毎日の運動療法をupdateしていく

今までに何度も、予防医療に対する運動の役割、重要性を書かせていただきました。 運動の良さは副作用がなく、薬などと同等もしくはそれ以上の効果が得られることにあります。 心肺機能が高まることはもちろん、認知症予防、うつ病の予防と治療、大腸がん予…

なんでも診れる医師はもう存在しえない

クリニックという医療の最前線で日々過ごしている立場から、未来のクリニックはこうなる、という予測をしてみたいと思います。 今回の内容は科学的根拠に基づく内容ではありませんので、様々な予想があって当たり前で、みなさまの予想も聞かせて頂けますと大…

心臓弁膜症を注意喚起するCMが最近やたらと多い理由

心臓弁膜症かも?というテレビCMが、この数年流されるようになったのをご存知でしょうか。 いままで誰も言い出さなかったことを急に言うようになったのか、その理由を一部の医師はおそらく気がついています。 いま、心臓病の世界では、世の流れとして、大き…

死に直結する家族性高コレステロール血症は、まず存在を認識することから

若いうちに心筋梗塞を起こす、家族性高コレステロール血症を今回ご紹介します。 その名の通り、遺伝性の病気です。 LDLコレステロールが高い、アキレス腱肥厚(アキレス腱が太い)、家族の中で55歳以下で心筋梗塞を発症した家族がいる、の条件があれば診断さ…

【うつ病】について学び直す

精神疾患は多岐に渡りますが、統合失調症、うつ病、不安症、不眠症、強迫症など症状からある程度分類されています。 内科の病気はある程度理論が確立した分野であるため、知識を持つのは比較的容易ですが、精神疾患はその点非常に捉えどころが難しいと感じて…

【下痢症】とは何なのか

外来で風邪と同様に多い症状として、下痢があげられます。 急性下痢症とは、 急性発症で(発症から14日以内)、軟便、水様便が普段よりも一日3回以上増加しているもの と定義されています。 原因は90%が感染が原因で、その多くはウイルスとされています。 …

【風邪】とは何なのか

抗菌薬に対する耐性をもった菌が増加し、その菌が原因での死亡者数が8000名という報道が最近されていました。 日本では抗菌薬を風邪にでも何にでもすぐ使用しすぎるから、耐性菌の問題が起こっているという趣旨の内容でした。 こういう話の結語は決まってい…

予防接種を学びなおす

若干の変化ながら、徐々に変わっていく予防接種。 小児科専門医や感染症専門医ならまだしも、基本的に内科医は予防接種のアップデートが後手に回りがちです。 その反省から、今回あたまの中を整理する目的で予防接種についてまとめてみました。 まず、ワクチ…

市販類似薬が保険対象外は正しいのか

現在の医療の進歩は、医療関係者であってもついていくのが難しい状況です。 その原因は、 1、以前よりも病気の数が増加したし、これからも増え続けること。 新しく発見された病気はそれほどないかもしれませんが、20年前と比較して一つ一つの病気が細かく分…

大学病院の役割を明らかにします

普段は、某大学病院の内分泌内科に通院している方と、偶然お話する機会がありました。初対面のかたでした。 内分泌外来とは、甲状腺疾患、糖尿病などをメインにしている診療科です。 その患者さんがいうには、 内分泌内科の担当医に「最近物忘れがひどいので…

【血圧の下げ過ぎ】とはどのレベルをいうのか

こんなに血圧が下がってますけど、大丈夫でしょうか? このようなご質問をいただくケースも非常に多いので、自分の確認作業の意味も含めてまとめてみたいと思います。 まず、血圧の下げすぎを検証することを目的とした、(前向き)な研究はありません。 なの…

低血圧の基準とは

低血圧という概念は、一般的に収縮期血圧(上の血圧)が100 mmHg以下の場合と定義されています。 しかしながら、100を切っていてもほとんどの場合、無症状で問題とならないことが多いようです。 なかには、神経の病気や糖尿病による神経調節障害が背景にある…