唐突ですが、高血圧は認知症の原因となります。
75歳以上の高血圧患者199名の臨床研究になります。
収縮期血圧(上の血圧)を130未満にしっかりと下げたグループと、145未満に甘めに下げたグループで、3年間の比較を行ったそうです。
結果、血圧を130未満に下げたグループでは、MRIで測定した大脳の微小血管障害が少なく、認知機能は差を認めなかったが、運動能力は明らかに高いという結果でした。
(統計学的有意差あり)
大脳の微小血管障害とは、高血圧によって脳の中の小さな血管がダメージを受けた、という認識でよいかと思います。
上記したデータは75歳以上に対するデータでしたが、今までにも50歳以上での調査で、同様の結果が出ています。
その際には高血圧のコントロール次第では、認知機能まで異なるとされていました。
血圧を下げると、 認知機能が低下しない、運動能力が低下しない。
機能的な老化を予防できるという結果です。
血圧は130/80未満あたりを厳守した方が良さそうな結果が結構たくさんあります。
日本でも次のガイドライン改訂では、高血圧の基準が現在の140/90以上からさらに下げることが予想されます。
診療中に最近特に思うことなのですが、
まずは、ご高齢でも外来に自分の足で歩いてこられる方が以前より明らかに増加しました。
そして、ご高齢でも、認知機能がしっかりしている方が以前よりかなり増えました。
さらに、これらを受けて
実年齢が90歳でも見た目年齢が78歳くらいに見える、といった、年齢に良い意味でのギャップがある方が増加しました。
これは、今回ご紹介した高血圧のコントロールが昔よりも徐々に良くなっているということも反映しているのでしょうし、
それ以外にも、衛生状態の改善や栄養状態の変化、そして、運動習慣の有無なども関連しているはずです。
運動習慣の有無によっても認知機能は異なるといったデータもあります。
遺伝的要素も大きく関与しているとは思われますが、遺伝的要素だけで説明できないように思います。
年齢の定義上は高齢者に分類されても、動ける高齢者は昔のイメージの高齢者とは全く異なっています。
時代遅れの60歳よりも、健康にある程度気をつかっていて、運動習慣もあって、自分の足でしっかり歩いている80歳の方が若いような印象を受けることが本当に多いです。
ただ、そこには認知機能がしっかり残っているかどうかが大きく関与していると思います。
自分のあたまで考えることができると、運動しよう、血圧気をつけよう、体重はどうだろうと、結果的に健康に相当気をつけることができますが、
認知機能が低下してしまうと、考えることができなくなっている可能性があります。
そういった意味で、認知機能を低下させないような習慣をつけること、病気を発症しないことが、一番の認知症対策であり、アンチエイジングだと思うのです。
結局のところ、アンチエイジングだといって見た目を修正しても、内部から崩壊している方もいないわけではありません。