予防医療のランダム・ウォーカー

内科専門医のblog 〜予防に勝る治療なし〜

低血圧の基準とは

低血圧という概念は、一般的に収縮期血圧(上の血圧)が100 mmHg以下の場合と定義されています。

 

しかしながら、100を切っていてもほとんどの場合、無症状で問題とならないことが多いようです。

 

 なかには、神経の病気や糖尿病による神経調節障害が背景にある場合、ホルモン異常(Addison病、甲状腺機能低下)や不整脈を起こした際に血圧が低下することもありますので、何らかの症状がある場合には、医療機関を受診すべきです。

 

低血圧で急な検査や治療が必要になるのは、ショックと呼ばれる病態です。

 

ショックには大量に出血した場合、心臓の機能が急激に低下した場合、細菌感染症で、敗血症になった場合、など原因はさまざまですが、結果として血圧が低下します。

 

とはいえ、こういった状況は比較的急激に起こるので、血圧の数値が低いことが前面に出るよりも、胸痛があったり、発熱があったり、心拍数がものすごく速いとか、心電図に異常があるとか、そういった変化を伴っています。

 

  

神経調節障害で失神を起こすような場合には、起立負荷試験という検査をして血圧の変化を観察する場合があります。

薬物治療や起立に慣れていく訓練をする場合もありますが、なかなか効果がはっきりいないこともあります。 

 

低血圧は女性では加齢とともに急激に減少し、一転して高血圧となり、昔は低血圧だったのに急に高いと言われるようになった、というパターンが多いと思います。

 

低血圧の定義を満たしたとしても、症状がなければそれほど不安になることはないのではないでしょうか。

 

若年女性では特に多いのですが、収縮期血圧が80前後でも無症状の場合の多くは経過観察になります(体質的な低血圧)。

 

とはいえ、現場では若い女性(男性もいます)で立ちくらみや長時間の立ちっぱなしで失神を起こす方がいらっしゃるのも事実です。

 

収縮期血圧がもともと120mmHgで安定していたのに、80mmHgしかない、とか、立ちくらみがすることが多いとか、脱水症で血圧が低くて循環不全を起こしている(多くは採血で腎機能が悪化)場合もありますから、気になったら一度クリニックで相談してみた方が無難かと思います。

 

もちろん、クリニック選びはよく考えて行ってください。

 

個人的な経験では、上記したように普段は120mmHgあるのに、最近80mmHgしかないといったように、いつもと違うのかどうかという指標が最も大切かと思います。

 

 

高血圧・低血圧を心配されるのであれば、基本的に毎日血圧と心拍数くらいは記録しておかないといけないのかなと思います。

 

オムロンからウェアラブル血圧計が発売になるようですし、今後Apple Watchも心電図機能だけではなく、血圧測定機能も付けてくる可能性があります。

 

体温測定機能もそのうちついたものが開発されると思います。

 

今後は多くの人が、血圧・心拍数・体温といったバイタルサインを簡単に目にすることができるようになりますから、もしかすると低血圧で治療が必要な方は、現状認識されているよりもかなり多い可能性もあります。

 

低血圧という分野はもっとすそ野が広く、進歩する余地が大きいのかもしれません。