予防医療のランダム・ウォーカー

内科専門医のblog 〜予防に勝る治療なし〜

死に直結する家族性高コレステロール血症は、まず存在を認識することから

若いうちに心筋梗塞を起こす、家族性高コレステロール血症を今回ご紹介します。

 

その名の通り、遺伝性の病気です。

 

LDLコレステロールが高い、アキレス腱肥厚(アキレス腱が太い)、家族の中で55歳以下で心筋梗塞を発症した家族がいる、の条件があれば診断されます。

 

エピソードをご紹介します。

 

38歳の男性。これまでにも2回、急性心筋梗塞で入院歴があり私が担当したのが、3回目の心筋梗塞でした。

 

38歳で3回も心筋梗塞を起こすのはまずふつうはあり得ません。

 

急性心筋梗塞は昔より救命率は高くなったとはいっても、一発終了がある怖い病気です。

 

さて、3度目の今回。

 

心電図では急性心筋梗塞の所見もはっきりしていて、1分でも早くカテーテル治療が必要な状況でした。

 

急性心筋梗塞の場合、詰まった血管を可能な限り早く再疎通せよというのが差し当たっての至上命題です。

 

ご家族に病院まで来てもらう時間を無駄にできないので、電話でカテーテルに対する同意をもらうのが通常です。

そこで急いで急患室から電話をしたのですが、「今すぐ行けるから待っていてくれ」と。

 

今の状況では待っていられませんとお伝えしたところ、すぐ行けると・・

 

5分くらいで急患室に来てくれたこの38歳男性の父ですが、なんと本人も2週間前に急性心筋梗塞で入院中だったのです。

 

そのため病棟から車椅子で看護師さんに付き添われ急患室に登場した。というわけでとても強烈なエピソードとして記憶に残っています。

 

ほぼ同じタイミングに急性心筋梗塞を発症した親子は後にも先にもこの一回だけでしたが、このように家族性に、しかもかなり若い段階で急性心筋梗塞を発症する家族性高コレステロールはかなり怖い病気です。

 

健診でコレステロールを指摘され、家族に心臓病の方がいたら、まずはこの病気を疑うことが大切です。

(もちろん脂質異常症の原因となる、甲状腺機能などをチェックは必須)

 

若年性心臓死の原因のひとつです。コレステロールは全く油断できません。

 

気をつけましょう。