こんなに血圧が下がってますけど、大丈夫でしょうか?
このようなご質問をいただくケースも非常に多いので、自分の確認作業の意味も含めてまとめてみたいと思います。
まず、血圧の下げすぎを検証することを目的とした、(前向き)な研究はありません。
なので、今回の内容は他の目的で降圧治療が行われた研究を、過去にさかのぼって検証した結果のレビューとなります。
評価には収縮期血圧(上の血圧)を使用します。
(これは、拡張期血圧よりも収縮期血圧のほうが心血管病の発生に関係するからです)
前置きが長くなってしまいましたが、学会が公表しているなかには、下げすぎと判断される血圧のレベルについて、はっきりした数値は示されていませんでした。
これより下には下げてはいけないという基準がない、現状では常識的な判断で、というところでしょう。
注意点は以下のようになっています。
1、収縮期血圧が120mmHg未満まで低下した場合には、血圧低下による有害事象の発生に注意すること
2、初期にはまず収縮期血圧を130mmHgを目指し、問題がなければ次に120まで降圧することによって過度の降圧は起こりにくい
3、高齢者では、収縮期130mmHg未満に降圧した場合には注意する。
要するに、収縮期血圧130までは安全にいける、そこから先は徐々に調整する、ということでしょうか。
120未満まで下げることができたら、その時点で採血等で循環不全の徴候がないかをチェックすることが重要そうです。
誤解がないように記載しますが、収縮期血圧を120mmHg未満にはさげないこと、という内容の記載はありません。
また、以前も簡単にまとめたのですが、頸動脈の狭窄や脳内の動脈閉塞などの病態があれば、多少降圧は甘くした方がよさそうなまとめ方をされています。
ここからの記載は個人的な見解で、科学的根拠はありませんが、
血圧は、薬をたくさん増やしていけばどこまでも下がる訳ではなく(もちろん常識的範囲の話で、血圧の薬を100錠飲んでしまった場合などは省きます)、あるレベルからは薬では下げられないような印象があります。
薬では下げられないレベルまで低下した場合、つまり、いつもは収縮期血圧が130なのに、調子が悪いと思って計ったら78だった、というように、いつもと違うのかどうかが医学的にはとても大事な情報になる気がしています。