減少する透析導入
透析患者さんが減っている
そんな話を透析クリニック関係者から伺いました。
その透析クリニックでは、年間10数人ずつ固定患者様が減っているそうです。
人口減の影響でしょうか?と聞くと、エリア人口は減っておらず、薬が良くなったからではないかとのお話でした。
競合クリニックができている影響もあるが、それにしてもこの数年減少が顕著であるとのこと。
透析クリニックはその高い料金もあり、ひとりの患者様増減で収益がだいぶ変わるようで、いろいろなクリニックに紹介の営業をしに行かなければならない時代になったそうです。
薬が良くなったから透析が必要になる人が減った。
これが本当であれば、我々の日々の診療がわずかでも社会貢献になっている可能性があり大変嬉しいのですが、立場が違うと非常に困る人もいるということは、見過ごせない視点かと思います。
透析の仕事をされてきた方々にとっては死活問題ですから、透析を予防する薬を出されたら困る、自分は絶対に出さないという医師も出てくる、という話になります。
これは昨今の糖尿病の治療にも同じことが言える気がいたします。
時代の流れなので仕方ないのですが、いろいろ変わっていけばそれに抵抗する流れも大きくなり、複雑な問題だと感じます。
心房細動のあたらしい治療
パルスフィールドアブレーションというあたらしいテクノロジーデバイスが日本でも使用されるようになりました。
心臓の中に入れたリング状のカテーテルについた電極からパルス状の電圧をかけることで、心房細動の原因となっている心筋細胞を死滅させる、熱や冷却によらないあたらしい治療法です。
百聞は一見にしかず、ですので実際に見てきました。
やり方は非常にシンプルな印象で、手術時間も短くなるようです。合併症も少ない。短期的な成功率も悪くないようです。
完全には理解できませんでしたが、カテーテルを心筋に接触させなくても成功するため、その成功が永続するのか
血液中の赤血球が溶血という現象を起こすことがある
接触をしっかりした方が広くアブレーションできる
などこれからの課題もよくわかりました。
実際にオペレーターをやっている先生は、やはり成功が永続するのか心配だ、というお話をされていました。
まだいろいろありそうですが、手術方法がシンプルで時間が早いというのはメリットかと思いました。
ACE阻害薬
一般的に血圧の薬に分類されます。
商品名としてはレニベース、タナトリル、コバシルなどが代表格。
とくにレニベースは科学的根拠を示す論文が多数あり、何年とレニベースを超えるようやデータを出せる薬剤はありませんでした。
一般名はエナラプリルマレイン酸
副反応は空咳が有名で、内服した場合、5人にひとりは空咳ありという感じです。
空咳が出たらめんどくさいから出さない、とおっしゃる先生が多数います。
しかし、このエナラプリルはただの血圧の薬ではなく、ひとことで表すならコスパ最高の心臓病予防薬といったところでしょうか。
安い薬のため、製薬会社のプロモーションはかなり前からありません。
使ってる先生も循環器専門医以外にはほとんどいないと思います。
しかしこの薬で、死の一歩手前から復活してきた人たちを何人も知っているだけに、やめられないというのが現状です。
高血圧に使うなら、まずはエナラプリル。
これからも変えずにいこうと思います。
加齢そのものが病気
人間のからだは今日より明日が確実に老化していきます。
1日スパンでの変化は小さすぎて自覚することは難しいですが、確実に毎日老化します。
老化したことで起こる現象としては、水や塩分がたまってしまったり、血管が硬くなることで起こる高血圧、おそらくホルモンなどの産生需要が落ちることによるコレステロール上昇、カロリーオーバーによって、糖が体内に溜まりすぎる脂肪肝からの糖尿病
こういったメカニズムが積もりに積もっていった結果、脳梗塞、心不全、透析へと進んでいく。
いつ発症するか予測は困難ですが、人間は誰しも日々、徐々にこういったことがからだのなかで進行しています。
若い頃は余分なものはからだの外に出せたし、そもそも成長に全部使えていたんです。
若い頃は血圧低すぎたのに、高血圧なんて初めて知ってショック、、
ほとんどそんな方ばかりなわけです。
40-50代が一番病気にもっていかれる可能性が高いのに、だれも血圧計すら持っていない。
このあたりにアプローチできれば、今60代以上の方が困っている脳卒中後の後遺症、心臓病での後遺症、週3回の透析は激減しそうなもの。
あとは良い薬は若い頃から躊躇なく飲む
それが老化を遅らせるポイントなのでしょう。
SGLT2阻害薬
糖尿病治療薬としてスタートしたSGLT2阻害薬が、慢性腎不全、心不全の治療薬に発展しました。
循環器内科としては使用できる機会がとても増えました。
いままで糖尿病専門医が主に任されていた薬という認識が強く、こちらとしては手を出しにくい薬の一つだったため、実際の状況をあまり知らず来てしまったわけですが、ここまで効果が高いのには驚きました。
人間のからだって、老化するといろんなものをため込んで捨てることができなくなるんだな、と改めて実感しました。
余分な糖(糖+ナトリウム)を体外に捨てる、というメカニズムが、飲んでもらっているみなさんの時計を巻き戻している。
老化を巻き戻している。
そのような印象を強く持ちました。
Apple Watchの威力と課題
Apple Watchに心電図機能が使用できるようになりました。
以前にもここでも記載しましたが、実際に使用してみると、さまざまな利点があることがわかりました。
(心電図機能以外にもたくさん良い部分があり、詳細はまた後日記載します)
まず、心電図機能ですが、動悸を感じた際に30秒間自分の意思で時間を選ばずに心電図を記録できることは大変有用に感じました。
もちろん心臓病の全てを診断しうるわけでもなく、クリニックや病院で記録する一般的な心電図とは得られる情報量はだいぶ異なると思います。
そもそも心電図で一発診断なんてできる病気は限られていて、他の血液検査やレントゲン検査も必要な場合が多い循環器病では、APPLE WATCHの機能は限られていて、APPLE WATCHの判断を鵜呑みにすることはできませんが、、
それでも、こと不整脈の診断に関しては、医療機関で心電図をとってもいつも問題ないと言われる、一日つける心電図(ホルタ―心電図と言われるものです)をしてもその日は何も起こらなかった。
ゆえに、あなたの感じている動悸はメンタルです。
そのように診断され、その後のフォローなし。なんていうことは医療現場では日常的によくあること。
(それでも不整脈専門医の先生方はそれなりにフォローしています)
なかにはそれでも私には動悸があるんだ、と携帯型心電計というものを購入され、動悸の原因をご自分で証明される方もいらっしゃいます。
APPLE WATCHは今後も検証は必要とは思いますが、
現時点では記録された波形をそれなりに経験のある先生が見れば、一定の診断がつくか、診断には至らないまでも、ある程度の疾患を推測することはできそうというのが印象です。
また使用者本人のタイミングで記録できるほか、定期的に波形をモニタリングしている様子。
高いけど、買う価値あり。です
特に普段動悸を感じているけれども、健康診断で心電図とっても、クリニックいってもいつも心電図はきれいとしか言われない。
そんな多くの方々に、是非手に取っていただきたいと思います。
正直想像以上でした。
妊娠と薬物療法を考える
妊娠中の女性の薬物療法ほど、気をつかう診療はないのではないでしょうか。
慣れているのは産婦人科医と、一部のごく少数の内科医くらいで、自分を含めほとんどの先生方は基本的にかなり気をつかっています。
というのも、診察に来院した女性が妊娠中なのか、そうではないのか、ご本人でさえ、わかっていないことがあるからです。
知り合いの先生は、
ある若年女性のかたの診察時に、妊娠はしていないということをご本人に確認。
それを疑わず必要な薬を処方したらしいのですが、
ご本人が、薬を内服してしばらくしたタイミングで、心配になって妊娠検査を自分で行ったところ、陽性となったらしく、
もう飲んでしまったが、大丈夫か?どうすればいい?と迫られたことがあるそうです。
ただ、それ以降は、余程の特殊な事情がない限り、妊娠時にも比較的安全というデータがある薬しか出さないことにしたそうです。
【女性を見たら妊娠と思え】という言葉は、医学部で教育を受けた人間なら、もう嫌になるくらい聞いている言葉ではないでしょうか。
妊娠中の女性を診察させていただくことは、それほど頻繁に訪れることはありませんが、だからこそ細心の注意を心に決めていないと、外来が忙しくなればなるほど、見逃しが非常に怖いです。
ですから、事前の準備がとても大切です。
妊娠中には少しでもリスクがある薬の内服は、できれば避けたいものです。
薬というものは妊娠の有無にかかわらず、一定の副作用の可能性があるからです。
「リスクを考慮しても、薬剤を投与することにより得られる効果が病態の改善にとって必要である」と判断されたときのみ処方するという点では、通常の場合も、妊娠時も一緒です。
妊娠時に特別なのは、薬剤を必要としていない胎児にも薬剤が投与されることです。
胎児とっては、副作用のリスクのみ押し付けられることになりますから、慎重にならざるを得ません。
内服薬の有無にかかわらず、妊娠には特に原因がなくても、一定の割合で流産や先天異常の発生率が認められますが、
もしこういった状況になった際に、母親は、あの時あの薬をのまなかったら・・という後悔をずっと持ち続けることになってしまいます。
そのため、妊娠中の薬剤処方は特に、気をつけなければならないといつも思うのです。