予防医療のランダム・ウォーカー

内科専門医のblog 〜予防に勝る治療なし〜

市販類似薬が保険対象外は正しいのか

現在の医療の進歩は、医療関係者であってもついていくのが難しい状況です。

 

その原因は、

 

1、以前よりも病気の数が増加したし、これからも増え続けること。

 

新しく発見された病気はそれほどないかもしれませんが、20年前と比較して一つ一つの病気が細かく分類されるようになり、結果として病気の数は増加しました。

 

これからも減少することはないと思います。

 

2、病気の治療法が進歩して、より複雑化している。

 

以前は治せなかった病気に対する新薬の登場であったり、より効果の高い薬の出現によって、記憶しなければならないもの(増え続ける薬の特性だけでなく、この場合はこの薬、違う場合は別の薬といったような治療にバリエーションが増加)が増加した。

 

大きくこの二つの要素が、

 

呼吸器科、循環器科、消化器科、脳神経内科、腎臓内科、感染症科、内分泌内科、精神科、脳神経外科、心臓外科、呼吸器外科、消化器外科、泌尿器科産婦人科、整形外科、リハビリテーション科、麻酔科、乳腺科、眼科、皮膚科、形成外科・・・など全ての分野で起こっているので、

 

もはやひとりの医師が全ての分野の知識をアップデートすることは、不可能な状況になっています。

 

なんでも診ますという医師が、なにも診れない状況になっているという理由は、こういった背景があるからです。

 

治療の進歩は、患者さんにとってはある意味好ましい状況なのですが、自分の症状や病気について、どこに相談していいのかの判断は非常に難しくなっています。

 

そして、これほどまで医療の分野が拡大し進化してくると、治療薬も複雑かつ高額なものになっていきます。

(開発費等が相当かかっているはずなので、高額になっても仕方ありません)

 

使用すれば病気はよくなるが、高額な薬が増加しているということなのです。

 

ひとはだれでも、良いと言われる薬があればそちらを選びたくなります。

 

高い薬剤の使用が増加すれば、医療費が増大します。

 

そして、そのお金は税金(社会保険料)から支払われています。

(その薬を使うのに、1割負担であれば税金から9割支払われることになります)

 

今後も生命に直接関わるような治療薬はどんどん増え、ますます税金が必要になりますから、これはどこかで抑制しなければいけない問題です。

 

国のお金が十分あれば、いままで通り市販類似薬も保険適応で良いとは思うのですが、市販で購入できるような安全性の比較的高い薬だけでも保険から外していかないと、市販化が難しいハイリスク・ハイリターンな薬に対して、国が補助ができなくなってしまう恐れがあります。

 

このままいくと、高額な薬は全額自費でお願いします、となってしまいます。

 

一か月使用すると300万円かかります、入院費は別です、全部自己負担で入金してくださいとなってしまったら大変です。

(高額療養費制度もこのままだと破綻する可能性は高いと思います)

 

今回、市販類似薬とされているのは、花粉症治療薬、湿布、皮膚保護薬、漢方薬などとされていましたが、これは個人的にはやむを得ないと思います。

 

もしこれが嫌であれば、国の税収を増やさないといけないので、消費税増税も20%までは覚悟しなければならないと思いますし、個人個人がもっと納税額を上げるような努力をしなければいけません。

 

今回これらの薬を保険適応外にしても、それでもそれほど余裕が出るわけではないので、近い将来、高血圧やコレステロールの薬ですら、保険適応外になるという議論が出てもおかしくないのではないかと思っています。

(ただ、これらの薬は疾患予防の重要性と副作用の面で市販することは厳しいとは思いいますが・・)

 

高齢者が増えて、若い世代が急速に減少すると、今までと同じ制度で若い世代が高齢者を支えることは難しいので、後期高齢者の2割負担も仕方ないと思います。

 

しかし、これが高齢者の受診行動にどのような影響を与えるのか、という問題もあります。