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内科専門医のblog 〜予防に勝る治療なし〜

心不全の新規治療薬【コララン】発売

11月19日付けで、心不全のあたらしい治療薬が発売になりました。

 

心不全の新規治療薬は何年ぶりでしょうか。

 

心不全とは、心臓が何らかのダメージを受けたあと(例えば心筋梗塞を起こしたあと)に、ポンプとして血液を送り出す機能が落ちることで、血液の循環不全を起こしてしまう病気(心臓病の最終像とも言えます)です。

 (※厳密にはこのタイプでない心不全もありますが、今回は言及しません)

 

長年、心不全治療はACE阻害薬(もしくはARB)、β遮断薬、アルドステロン受容体拮抗薬、利尿薬などが担ってきましたが、最近潮目が少しずつ変化しています。

 

糖尿病治療薬のSGLT2阻害薬という薬剤が心不全による再入院を抑制することがわかり、現在糖尿病を伴う心不全に使用が推奨されるようになりました。

 

今後、糖尿病を伴わない心不全にも拡大適応が可能かどうかが議論されていくでしょう。

 

これに追加して、今回コララン(イバブラジン)という薬剤が発売されました。

 

海外では既にポジティブデータのある薬ですが、この薬は今までの心不全治療薬を十分に使用した上で、それでも心拍数がある一定以上ある場合に限り追加使用可能という条件つきです。

 

基本的には心拍数を下げる薬で、かつACE阻害薬、β遮断薬、アルドステロン受容体拮抗薬などを使用してもコントロールがつかない場合ですから、使用状況としては限られそうですが、特にCRTDなどの心不全に対するペースメーカが入っている方にはかなり使用しやすい薬なのかなという印象です。

 

しかし、心不全の方の飲まなければならない薬の数はどんどん増えていきますね。多剤併用するなと言われても、循環器分野ではそれはおそらく無理というもの。

 

ひとつ特効薬があれば済みそうなものですが、そういった薬がなかなか開発されないところに心不全の治療の難しさ、奥深さが表れていると思います。

 

心不全は高齢化や、急性心筋梗塞などの急性疾患の救命率の上昇によって、現在進行形で爆発的に増加しています。これを学会等では心不全パンデミックと定義しています。

 

脳卒中・循環器病5カ年計画が法制化されたのも、こういったことを背景にしています。

 

残念ながら、心不全はこれからもっともっと、身近な病気に変わっていくでしょうが、運動療法薬物療法の進歩がそれを超えていくことを期待します。