予防医療のランダム・ウォーカー

内科専門医のblog 〜予防に勝る治療なし〜

血圧手帳がなくなる日

自分の担当している外来は高血圧、コレステロール異常、不整脈、慢性心不全、虚血性心疾患の順に患者さんが多く、

 

特に、他の内科外来で血圧のコントロールがつかない方を担当させていただくケースが多いです。

 

一応循環器内科としていますが、外来ではその絶対数から、高血圧専門外来に近い状況になっています。

 

高血圧のコントロールを行う際に、大切なのは自宅での血圧測定です。

 

以前にも書きましたが、一般的に高血圧の基準は 140 / 90 以上 ですが、

 

家庭での血圧の基準は、135 / 85 以上 が高血圧と定義されています。

 

この数値を極力下回るように工夫をしていく仕事が、外来では多いです。

 

 

この家庭での血圧の確認方法ですが、一般的には【血圧手帳】というものを患者さんにお渡しし、そこに家庭での血圧の数値を書き込んでもらい、外来受診の際に持ってきてもらうという方式が、日本全国で行われているかと思います。

 

最近はスマートフォンなどに記録してこられる方もだいぶ増えましたが、それでも70歳以上の方はやはり紙媒体が主になります。

 

血圧手帳は毎日記載していくため、数か月でいっぱいになり書くところがなくなると、次の手帳をお渡しするというのが通常のやり方なのですが、

 

この最近、血圧手帳が手に入りにくくなっているのです。

 

血圧手帳の入手ルートは製薬会社の場合が多いそうですが、製薬会社からの供給がなくなりつつあるため供給が激減しているのだろう、ということでした。

 

これは、製薬会社が途中に介在することで、特定の薬剤をひいきするようなことはあってはならないという観点からの措置ではあるのかなとは思います。

 

ただ、外来中に患者さんにお渡しする血圧手帳がありません、と言われて直感的に何となくふと思ったのは、血圧手帳すら渡せないくらい日本が貧しくなっているのでは?でした。

 

製薬会社もジェネリックの台頭で、昔のように売り上げは伸ばせなくなっているでしょうし、その中から薬の開発費用を出していくのはかなりきついのではないかと思います。

 

もし仮に血圧手帳を出せなくなるほど、血圧の薬に売り上げがないとしたら・・

 

血圧手帳の廃止が日本の衰退の一部を反映しているのでは、と思いながら外来を続けた一日でした。(かなりおおげさですが)。

 

 

最後に本文とは関係のない内容ですが、今日の外来では珍しくlongRP'というやや特殊な頻脈の方を担当しました。

 

鑑別診断がやや複雑になるケースですが、ご本人の症状が動悸ではなく、立ちくらみでした。

(long RP'頻脈はだいたいの場合ですがfast/slow AVNRTかATです。だれも気にならないとは思いますが、一応記載しました)

 

心電図とってみないとわからないことは多いなあと、再確認させられました。

 

 

また、以前より動悸がするけれど、不整脈がつかまっていない方も、根気よく検査を繰り返したところ、本日ようやく心房細動を心電図で記録できました。

 

不整脈は医師と患者さんがどれくらい根気強く、検査を繰り返せるかが全てな気がします。

 

今日もひとりの方の脳梗塞発症を予防できました。