予防医療のランダム・ウォーカー

内科専門医のblog 〜予防に勝る治療なし〜

【心臓病には安静が必須】という誤解を解く(2)

先日、心臓病の予防や治療後にこそ、運動が必要だというお話をさせていただきました。

 

内容を補足します。ちょっと専門的ですが、是非お付き合いください。

 

心臓病の運動療法(心臓リハビリテーションといいます)の効果は、

 

1、心筋梗塞の再発を予防する効果

2、心不全の予防効果

3、不整脈の予防効果

4、心筋梗塞発症後の死亡率を下げる効果

5、動脈硬化発生の予防、動脈硬化を減少させる効果

 

これら以外にも、

 

内臓脂肪減少、血糖値を適切にする、コレステロール値を改善する、高血圧を改善する、ストレス・うつ状態を改善するなど、からだに良い効果ばかりが科学的に証明されていて、かつ、副作用がないのが、運動療法の凄いところです。

 

これらの効果は、どれも素晴らしい効果で優劣はつけがたいのですが、特に、5の【動脈硬化を減少させる効果】というのがどういう深い意味があるのか、少し詳しく解説します。

 

動脈硬化を減少させるとは、

 

動脈硬化、つまり、血管の壁が硬く狭くなって起こる病気を、適切な運動を継続することで改善できる

ということを意味しています。

 

例えば、安定型狭心症といって、心臓へ血液を送る冠動脈という3本の血管が、動脈硬化でだんだん狭くなる病気があります。

 

安定型狭心症の治療を選べと言われると、医療関係者でさえ、すぐにカテーテル治療、冠動脈のバイパス手術と答える人が多いと思います。

 

もちろん内服薬は必須ですし、病状の程度にもよりますが、胸が苦しくならない程度の運動を継続すれば、動脈硬化は減少していく訳ですから、カテーテルでの治療や、手術を回避できる可能性があります。

 

カテーテルによる治療は、一般的には心臓の血管にステントという異物を留置するため、手術後長期的にステントがトラブルを起こす可能性を心配しなければなりません。

(それでもトラブルの率はステントが進化することで、減少はしています)

 

冠動脈のバイパス手術というものは非常に良い治療ですが、誰でも可能ならば、手術は受けたくはないものです。

 

運動とコレステロールの治療薬(スタチンという種類になります)で、(心臓の血管を含めた全身の)動脈硬化は、ある程度までなら治療ができるということは、覚えておいていただいて損はありません。

 

安定型狭心症に関しては、どこまでの動脈硬化カテーテルで治療しなければいけなくて、どこまでが運動と内服薬で治療ができるのか、検査をするとある程度わかります。

 

少し専門的な内容になってしまいました。

 

次回は、こんなに良い心臓病の運動療法が、なぜ日本で100%普及していないのか、非常に的を得た提言をされていた先生がおりましたので、ご紹介したいと思います。