予防医療のランダム・ウォーカー

内科専門医のblog 〜予防に勝る治療なし〜

医療の地域格差がとんでもないレベルになっている

医療を提供する側の医療への関心と、医療サービスを受ける側の医療に対する期待と信頼、また、その地域での歴史を非常に強く反映するのが、医療の質です。

 

日本の医療には数多くのガイドラインという、診療を行っていく際の、ある一定の決まりのようなものがあります。

 

例えば、このブログで以前ご紹介した高血圧に関するものは、全て【高血圧治療ガイドライン2019】というものに準拠した内容で記載しています。

 

ガイドラインは、過去の膨大なデータから【これをやったら確実に良い】というものと、【これをやったら悪い】というもの、そして、【まだわからないものはわからない】として、それを文章にしています。

 

全国どこからでもガイドラインにはアクセス可能なので、全国どこでも、同様な医療が受けられる、と思っていましたが、現実には地域格差が結構すごいことがわかりました。

 

【薬を飲んでから調子が悪い】という訴えが全くない地域とすごく多い地域があります。

 

どちらの場所でも、同じ診療をしていても、です。

 

薬を飲んで調子が悪くなったから、自己判断で内服をやめたという人が多い地域では、例えば、まず血圧を140 / 90 未満に下げると、何人かの方が調子が悪い、ふらつくといった症状を訴えてくることが多いです。

 

血圧がずっと高い状態で不十分な内服でずっと来てますから、まず数字が低下した違和感が非常に強いのでしょうか。

 

高齢者だから血圧が高くて当たり前だろ、という話が始まってしまうことも結構あります。

 

当然、そういった方に減塩しましょう、運動しましょうといっても、全く聞いてもらえません。

 

血圧の薬に限らず、【薬は悪いものだ】という強い固定観念を地域全体に感じる気がします。

 

手術などの治療に対しても同様です。治療に対するハードルが非常に高い。

 

昔、何があったんだろうか、と思うくらいの医療に対する不信感を感じます。

 

こういう状態だと、手術する側もなかなか萎縮してしまって、良い医療ができないという悪循環が出来上がってしまいます。

 

同じ治療をしていても、ある地域では感謝され、ある地域では文句を言われるという、ある意味、貴重な経験をすることがあります。

 

少なくとも、自分の患者さんが調子が悪くなって喜ぶ医師はいないはずです。

(悪意を持って書けば、自分の患者さんだけは良くなってほしいと思っている人はいるかもしれませんが)

 

そこをもう少しわかっていただけたらと思います。