【動悸】は勘違いされています
日々の生活の中で、ちょっとしたタイミングに動悸がする方って、たくさんいらっしゃるんじゃないでしょうか。
動悸は、どきどきする、脈が速くなる、脈がとんでいる、などで表現されることが多いと思います。
動悸の原因は多くが不整脈ですが、動悸の時の心電図がないと、診断ができません。
だいたい診察時には動悸が起こっていないですから、その時のたった一度の心電図で異常がなかったばかりに、
「その動悸は更年期だから、精神的なものだから」と言われて、本当は不整脈なのに、詳しく調べられていない患者さんと、今までかなりの頻度でお会いしてきました。
自律神経失調症だ、と診断されている場合もあります。
このようなことが良く起こる背景には、不整脈を見つけるのはなかなか大変で、工夫が必要で、かなりの手間がかかるからです。
【不整脈はたった一度の心電図では何もわからない】ということを、よく知ってください。
脳梗塞になって初めて、不整脈だったということがわかるのは辛すぎます。
数年前に経験した、印象深い出会いをご紹介します。
34歳(当時)の女性。
20代の頃から動悸がひどかったが、医療機関を受診した際にはいつも動悸はおさまっており、心電図は正常。
ホルター心電図という24時間記録できる心電図を施行しましたが、その日は動悸が全く出ずに、正常と判定されました。
動悸は精神的なものと診断され、向精神薬や抗不安薬が開始となりました。
しかし、それらを内服しても症状は全くよくなりません。
動悸がひどいので、と訴えては、内服薬の種類は徐々に増え、計6種類まで内服が増えていました。
そして、ついに、心電図で不整脈が記録されるに到ります。
結果は【発作性上室頻拍】という、心拍数が1分間に160回程度まで急上昇する不整脈でした。
発作性上室頻拍という不整脈の95パーセントはカテーテル治療で治ってしまいます。
カテーテル治療後、動悸が全くなくなり、精神科の方で処方されていた6種類の向精神薬、抗不安薬はすべて中止となりました。
「飲んでいた6種類の薬はなんだったのでしょうか?」と、最後の外来でおっしゃっていたのが、とても印象的でした。
こういった方を少しでも減らすために、日々診療に当たっているのが、不整脈専門医の先生方です。
動悸がしたら、不整脈専門医に一度は相談すべきです。