今の仕事を始める前は、医学がここまで厳密、正確なものだとは思っていませんでした。
診察時に、雑誌に、危ない薬20種が載っていて、
「自分が内服している薬が入っていました。大丈夫でしょうか?」
「記事を読んで、勝手にやめたけど大丈夫でしょ?」
と、ご質問を受けることがあります。
これについては、自分なりに考えがあって、それをお伝えするようにしています。 ひとつの薬が開発される背後には、その薬に対して、ものすごい数のテストがされています。
まず、そもそも、メリットがデメリットを上回れない薬は、世に出ないと思うのです。
たまたま、副作用がでることもあるかもしれません。
ただ、それを上回るメリットがあるから、発売されているのです。
また、仮に世に出たとしても、副作用の頻度が高い薬剤は、長期間市場に存在することは難しいと思います。
現在の医学は、背後には大量のデータがあり、
例えば、
ある病気で、薬を飲んだ人と飲まない人を追跡した結果、ちゃんと飲んでいた人たちでは、5年後に生きている確率が高かった、とか、合併症発症の割合が低かったとか、結果がちゃんとしているものが非常に多いのです。
日本人の寿命が延びているのは、手術などの技術革新よりも、薬物療法の進歩にあると思います。
そんなことをいろいろ知るようになってからは、自分の健康にも、自分の得た知識を使って対処するようになりました。
飲む必要がある薬は絶対飲んでください。
病気によっては自己中断することで、そのまま生死に直結する場合があります。立場上、そういった場面を多々見ています。
前回取り上げた検診の場合も、国は、検診の効果を確認できた、肺がん、胃がん、大腸がん、乳がん、子宮頚がんについては税金を入れて検診を勧めています。 検診の効果が微妙な他のがんについては、いまのところ税金を入れていません。
費用対効果がないものについてはかなりドライなのです。
こういうことを全然知らなかった、昔の自分をたまに思い出して、
患者さんにはなるべくその頃の自分に説明するように、丁寧にしようとは思っています。