予防医療のランダム・ウォーカー

内科専門医のblog 〜予防に勝る治療なし〜

ジムでの運動が不正確な理由・続

前回、運動生理学について書きました。

運動中のからだには、酸素と糖が必要で、それをうまく回すには肺の機能、心臓の機能、骨格筋の機能が重要だとまとめました。

もうひとつ、重要な要素について言及し忘れたので、今回はその話題にします。

その要素とは、血液中の赤血球です。

酸素は血液中の赤血球によって骨格筋を含めた全身の組織に運ばれるので、貧血がある(つまり赤血球が少ない)と、心臓や肺が正常でも、運動機能は格段に落ちることになります。

酸素をいくら肺で取り込んでも、赤血球が少ないと運ばれにくくなるので、心臓が空回りをして頑張ります。

これは心臓への過度な負荷となり、心拍数が上がりすぎて、心臓から出せる血液量は結果として減るでしょう。

骨格筋は酸素不足なので、簡単に回路b(前回の内容を参照してください)が使われてしまうので、からだが早い段階で酸性化し、運動ができなくなるはずです。

陸上の長距離の選手が鉄剤を内服していた、というようなニュースが以前ありましたが、多かれ少なかれ、陸上の選手は鉄剤を内服していると思います。

その理由がこれです。

ですから、運動前には採血で貧血の有無も評価すべきなのです。特に若い女性は知らずに運動していると、運動がプラスではなく、マイナスになることがあります。

今後はトレーニングジムでも採血内容くらいは見ないといけない、そんな時代の流れが来ると思っています。

循環器で運動生理学を専門にしている医師は、心肺運動負荷試験という検査から運動処方を割り出します。その立場からみるて、世の中は本当に不正確な運動ばかりを強要しているように感じます。 (個人的感想ですが、医学的には正確だと思います)