予防医療のランダム・ウォーカー

内科専門医のblog 〜予防に勝る治療なし〜

Apple Watch による心電図管理の時代に

今回は予防の話題から少し離れて、唐突ですが、徐脈とペースメーカについてと、これから予想される社会の変化を考えました。

 

脈が極端に遅くなる状態を、徐脈といいます。

 

心臓は電気で動いていて、洞結節という名前のついた発電所で電気が1分間に約60回から100回のペースでつくられ、その電気が心臓の中にある電線に乗って広く心臓に電気が伝わることで動いています。

 

徐脈とは、

1、発電所の発電が弱くなるもの(洞不全症候群)

2、発電所から心臓全体に伸びる電線が切れてしまうもの(房室ブロック) このどちらかで起こります。

 

ですので、治療は発電所の電気の代わりをするペースメーカという人工発電機を弱った発電所の近くに植えこむ、または、切れた電線の代わりの人工的な電線を心臓に植えこむ、この二択になります。

 

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ペースメーカ以外に、脈が遅い時にできることは、なかなかありません。

薬剤で心拍数が上げられるものはない訳ではありませんが、安定した効果はなかなか得られません。

 

徐脈の予防方法については、今のところ思いつきません、、

ただし、若年者では起こることがほとんどありません。

 

最近はリードレスペースメーカという従来のペースメーカとは異なった、新型のペースメーカも出ていますが、使用できる場面は限られるようです。

 

 

そして今後、Apple Watchによる心電図管理の時代になりそうです。

 

手首に着けた医療用ウェアラブルバイスが、徐脈を含めた心拍数の問題や、その他多くの不整脈の問題を、今とは比べものにならない頻度で発見するようになります。

 

 特に、心房細動という不整脈が発見される頻度は、爆発的に増えるのではないでしょうか。

心房細動については、重要すぎる心臓病のひとつなので、あらためて詳しくまとめたいと思います。

 

 

また、動悸を訴えても心電図で不整脈が発見されず、精神的なものだから気にする必要はない、と診断されてしまっている多くの患者さんにとって、この心電図機能は福音となります。

 

少なくとも、今の不整脈専門医の数ではとても足りません、、

 

 

今日は予防から離れ、自分の専門領域の少し込み入った内容になってしまいました。