現代の重要疾患のひとつ、心房細動について、また改めて記載します。
「心房細動ですが、症状が全くないんです」とおっしゃる方はたくさんいます。
健康診断でみつかっただけで、自分では何も感じないんです、というわけです。
人間のからだは急激な変化を敏感に感じ取りますが、ゆっくりした変化はあまりわかりません。ゆっくりした変化には【代償】といって、様々な方法でその状態に適応していきます。
例えば、急にどこかの血管が詰まったら、今まで100あった血液がいきなりゼロになるため、当然からだは変化をすぐに感じて、痛みなどの症状を出します。
一方、血管がゆっくり年単位でだんだん狭くなれば、その低血流状態に順応、適応します。それが人間のからだです。
がんが見つかりにくいのも、ゆっくりだんだん大きくなるから、ではないでしょうか。
心房細動も発作性のものは出たり消えたりしますので、その急激な変化に対応できず、症状が激しく出る傾向にありますが、慢性的、持続的な心房細動というタイプもあり、それは徐々に進行するので、症状がでにくいのです。
(発作性の心房細動が持続性、慢性へと移行するという説もありますが、発作性の方はいつまでも発作性で、持続性とは一線を画しているという専門家の見解もあります)
さて、持続性、慢性心房細動はゆっくり進行しますから症状がでにくいのですが、ご本人が感じていないだけで、全くないというのはまれです。
よく聞くと、動いた時に息切れがする、足が少し浮腫むようになった、など自分では気がついていないだけで結構たくさんあります。
これは医療者側が細かくチェックし、見つけないとわからないのです。
心臓病は安静時と運動時では状況が全く違うということも大切なポイントです。
診察室では安静時の状態しかわかりません。心電図や心臓のエコー検査も、もちろん採血も、安静時の情報しかわかりません。
これは、心臓病をみる際の重要なポイントで、最大の盲点でもあります。
心房細動はずっと続くと慢性心不全になります。採血でもBNPといった心不全のマーカーは上昇していることが多いです。
症状がない心房細動はほっとけば良い、というのは前時代的な治療で、これからは通用しないでしょう。
よく聞けばほとんどの心房細動の方に症状はあります。
心房細動の方は、詳しい専門家によく相談してみましょう。