予防医療のランダム・ウォーカー

内科専門医のblog 〜予防に勝る治療なし〜

細かいことは考えずに、手軽に運動するなら

前回のつづきです。

 

正確な負荷をかけた運動は、本来は採血検査の結果やその人のリアルタイムの生体情報(血中酸素濃度や血圧、心拍数、体温)を全て把握したうえでやるというのが、とても大事。という内容を書きました。

また、さらに心臓の機能、肺の機能、腎機能などもチェックした上で行うのが正しいとも書きました。

 

現状では、ここまでできるトレーニングジムのトレーナーはいないはずです。

なぜなら、彼らは筋肉のことは知っていても心機能や肺の機能までは評価できないからです。

 

自分で手軽に安全に、しかも効率よくできる運動を考えます。

 

大事なことは

1、息切れがし出したら、一旦中止をすること

2、運動中の心拍数を110から120 回/分くらいまでにする*

 

*Karvonen式)  目標心拍数=(220 - 年齢) × 0.4+安静時心拍数 より

 

また、もし運動の合間に血圧が測定できるのであれば、血圧が開始時より低下していたら休んだ方が無難です。

 

以上を踏まえたうえで、自宅で自分で安全に、手軽にできる範囲は、自分の体重を使った自重トレーニング(筋力トレーニング)と、ウォーキングがよいと思います。

 

筋力トレーニングもいろいろとやりだすと非効率になり、継続が難しくなる方が続出しますので、ハーフスクワット30回、踵上げ30回を最低のノルマにしていただくようにしています。

 

ウォーキングは一日30分が理想です。

 

筋力トレーニングを下半身を中心に行う理由は、下半身の筋肉量がつくと、ウォーキングによって摂取したカロリー(炭水化物)を効率的に燃焼させることができるので、筋力トレーニングとウォーキングの相乗効果が見込めますし、何より効果を体感していただけるからです。

 

筋肉量が多いと使用される糖分も多くなりますから、痩せやすいからだになります。

 

運動前後には、タンパク質やアミノ酸は十分とりましょう。

 

心臓リハビリテーションという、心臓病の方の運動プログラムでは、アミノ酸(主にロイシン)を積極的に摂取した方が高い運動効果が得られているという結果が出ています。

 

炭水化物はおそらくほとんどの人が摂りすぎています。

 

軽度の糖尿病、高血圧、高尿酸血症、軽度の腎機能障害の40代の方が、2か月これを可能な限り実践してくれました。

結果、体重が5キロ減少し、糖尿病の値も正常範囲まで改善。血圧が低下し、腎機能も改善していて、とても感動してしまいました。

本人の心がけ次第です。将来の自分は今の自分の積み重ね、延長線上にしかありません。

 

摂取したカロリーをからだにため込まないカラダ作りが、様々な病気を予防するのは間違いありません。

 

 

参考文献:

CPX・運動療法ハンドブック ~心臓リハビリテーションのリアルワールド~ 改訂3版 (編著 安達 仁)