予防医療のランダム・ウォーカー

内科専門医のblog 〜予防に勝る治療なし〜

有酸素運動・レジスタンストレーニングそれぞれの特徴を再確認する

あらためて、exerciseの有効性をまとめてみたいと思います。

 

わたくしは、心臓病の運動療法を専門にしており、いままでに様々なケースでの心臓リハビリテーションを経験してきました。

 

狭心症心筋梗塞後の運動療法はもとより、重症心不全、なかには心臓の機能が著しく悪く、人工心臓を装着しなければならないケースでの運動療法の経験もあります。

 

心臓病のケースに比べれば、一般の未病(まだ病気を発症していない場合)の方の運動に関しては、比較的安全に行えるケースが多いと思いますので、ひとりでも多くの人に始めてみていただきたいと思います。

 

運動は、薬物療法のような副作用の心配がなく、同等の効果が得られる点ですばらしい治療法です。

 

有酸素運動の特徴】

1、最大酸素摂取量の増加効果=心肺機能の改善効果

2、心拍出量の増加効果

3、安静時心拍数の低下効果

4、インスリン感受性の改善効果=糖尿病の予防・治療

インスリンとは血糖値を下げるホルモンです)

5、中性脂肪の低下効果、HDLコレステロール上昇効果

6、収縮期血圧の低下効果

7、自律神経機能の改善効果

8、狭心症心筋梗塞などの発生率の減少効果

9、心不全増悪による入院の減少効果

10、生命予後の改善効果(さまざまな死亡、心臓死の減少)

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11、大腸がん(結腸がん)予防効果

12、肥満改善効果

13、骨密度改善に対する効果

14、精神疾患(うつ、ストレス、不安)改善効果

など

 

※心肺機能を大きく改善させるが、筋力増加に対する作用はほとんどない

 

 

有酸素運動の良さは、科学的な根拠が証明されているものだけでもたくさんあります。

これ以外にも細かなことを挙げていけばきりがないです。

 

以前ご紹介したISCHEMIA試験以外でも、狭心症に対してカテーテル治療と運動療法で比較したものでは、カテーテル治療よりも運動療法をした群では結果が良かったとされるデータもあります。

 

有酸素運動とは、一般的にはウォーキングとぺダリング(自転車こぎ)になります。

 

 

レジスタンストレーニングの特徴】

1、筋力・筋持久力の増加効果

2、骨密度改善効果

3、インスリン感受性の改善効果

4、肥満改善効果

など

 

レジスタンストレーニングも一般的には有酸素運動と同等の効果を見込めますが、一番の相違点は、

 

レジスタンストレーニングは筋力増強効果はあるが、心肺機能は向上しないという点です。(有酸素運動には筋力増強効果はありません)

 

 

どちらが優れているのかということではなく、それぞれの良さを知識として知って、運動を継続することが重要です。

 

 

肥満を改善させるため、ダイエット目的で運動をしたいという方が多いと思いますが、その場合は、下半身の筋力トレーニングから開始するのが一番かもしれません。

 

体重が標準よりはるかに多くなっている場合は、歩いただけで膝関節に負荷がかかりますから、膝周囲の筋力を増強するのは理にかなっています(変形性膝関節症の予防)。

 

脚が太くなりそうで嫌だ、という人は多いですが、脚を太くするまでにはかなりの筋力トレーニングが必要ですから、始める前から心配する必要はないと思いいます。

 

運動は目的が何であれ、最終的にはさまざまな病気の予防につながっているということははっきりしています。

 

運動をはじめる、継続する動機はなんだっていいのです。

 

 

有酸素運動レジスタンストレーニング以外にも、最近になってヨガの有効性を示すデータも出てきています。

 

良く精査して、またご紹介したいと思います。