予防医療のランダム・ウォーカー

内科専門医のblog 〜予防に勝る治療なし〜

末梢動脈疾患はハイリスク

見逃されやすい病気として、末梢動脈疾患(PAD)について概説してみたいと思います。

PADは簡単に表現すると、脚の動脈が狭くなったり、つまったりしてしまう病気です。

症状は、下肢の冷感(足が冷たい)、しびれ、少し歩くと足が痛くなり休むと治る、です。

動脈硬化ベースなので、当然ご高齢の方に多くなりますので、脊柱管狭窄症という、腰の脊髄が圧迫される病気と似ており、気がつかれていないケースもあるかと思います。

PADの問題点は、歩く距離が制限されてしまうので、生活の質が低下することですが、それ以上に怖いのは重症化すると下肢の切断が必要になってしまうこと。

そして、PADでは心臓や脳の血管トラブルを合併するため、心筋梗塞後の方、脳卒中後の方よりも、心血管死亡率が高いことが示されています(REACH試験)。

最近ではさまざまなカテーテル治療ツールが開発され、血管形成術の成績は良好になりました。

カテーテル治療は短期的には症状を劇的に改善し、歩行可能な距離は長くなりますが、運動を併用しないと一年後にはカテーテル治療をしないで運動治療を続けた人と差がなくなることが示されています。

具体的な運動療法の内容は、基本有酸素運動ですが、ポイントは足に痛みが出るまで続けるという点です。

注意点は先程も書きましたが、PADの方は心臓、脳血管トラブルの合併症が多いので、その辺りもチェックしてからが良いということです。

内服薬は抗血小板薬が推奨されています。

歩いていて足が怠くなる、痛くなる、足が冷たいなどの症状があれば、検査は比較的簡便なので一度調べてみることをお勧めします。