予防医療のランダム・ウォーカー

内科専門医のblog 〜予防に勝る治療なし〜

2019-01-01から1年間の記事一覧

白衣高血圧は様子をみて良いのか

白衣高血圧とは、診察室では高血圧となるが、診察室以外の自宅等では正常な血圧を示す場合をいいます。 これまで、白衣高血圧はそれほど問題はない、とされてきました。 実際にいまでも、多くの先生が自宅での血圧が問題ないなら病院で160でも大丈夫ですよー…

AIが脳梗塞の原因を検知可能に?

脳梗塞の原因として対処することが可能な、心房細動についてのあたらしいTOPICです。 また、心房細動か・・と思われたかたもいらっしゃるかと思いますが、 心房細動は突然、誰にでも起こりうる病気で、かつ合併症の重症度が高いので、今後も何度もまとめてい…

知識がないと惜しみなく奪われる

どの業界にもあることではあるとは思うのですが、 【知識がないと惜しみなく奪われる】のは世の常です。 少し前に話題に挙がっていた【血液クレンジング】という医療行為について、さまざまな報道をみて、あたまに浮かんだのがこのフレーズでした。 日本では…

Apple Watch は脳梗塞予防の切り札となれるか

Apple Watchの心電図機能を使用した40万人を超えるビックデータについて、いまさら感はありますが、ご紹介します。 Apple Heart Studyと名前のついた研究で、最近医学雑誌にアクセプトされました。 内容は簡単にいうと、41万人にApple Watchをつけていただき…

心不全の新規治療薬【コララン】発売

11月19日付けで、心不全のあたらしい治療薬が発売になりました。 心不全の新規治療薬は何年ぶりでしょうか。 心不全とは、心臓が何らかのダメージを受けたあと(例えば心筋梗塞を起こしたあと)に、ポンプとして血液を送り出す機能が落ちることで、血液の循…

夜勤は【がん】のリスク

繰り返す夜勤によって、一日の生活パターンを一定にさせることが難しい職業は少なくありません。 夜勤をする労働者の割合は20%程度といわれています。 夜勤による生活パターンの変化(日勤になったり、夜勤になったりする勤務交代を伴ったもの)が、さまざ…

高いサプリメントを飲んで、処方薬を嫌うのはなぜか

薬は飲みたくない、と思うのはなぜなのでしょう。 薬は副作用がありそうだからでしょうか。 一回飲んだらずっと飲むんですよね?それは嫌です。と言いながら、高いサプリメントを買って毎日飲んでいる方は結構多いと思います。 一回飲んだらずっと飲まなけれ…

睡眠障害とうつ病(当直・夜勤制度の限界)

睡眠とメンタルについて、少し調べてみました。 上図は各国の平均睡眠時間のデータです。男女とも日本は睡眠時間が少ない傾向にあります。 睡眠がからだの修復や免疫に関与していることは前回も触れましたが、インフルエンザウイルスの感染について。 睡眠が…

精神疾患には睡眠が関与している説を考える

睡眠不足がうつ病などの精神疾患の原因となっているという話題です。 精神科専門の先生方が、睡眠不足がうつ病などの精神疾患の原因となっている。抗精神薬を内服するまえに、睡眠を整えることが大切だというのです。 睡眠を整えるとは、睡眠時間の量と質の2…

医療の地域格差がとんでもないレベルになっている

医療を提供する側の医療への関心と、医療サービスを受ける側の医療に対する期待と信頼、また、その地域での歴史を非常に強く反映するのが、医療の質です。 日本の医療には数多くのガイドラインという、診療を行っていく際の、ある一定の決まりのようなものが…

若年性突然死を見て改めて思う【できることはやっておく】ことの重要性

最近、脳卒中、心臓病の予防の話題ばかりになってしまい、自分でも若干飽きてきていたところでしたが、今朝、34歳の俳優の方が虚血性心疾患によって亡くなったという大変残念なニュースが飛び込んできました。 この年齢で虚血性心疾患(急性心筋梗塞、不安定…

人生100年時代を生き抜く~本物のアンチエイジングとは~

人生100年時代になりそうです。 前回までは、国が法制化した【脳卒中・循環器病克服対策】についてご紹介しました。 この法制化の目的としては、 a) 脳卒中・心臓病の発症には予防が可能な要素が多くあるが、それを国民全体に周知できていない。脳卒中・心臓…

脳卒中・心臓病予防は国家的事業

前回、平均寿命と健康寿命は大きく異なるものだという話題をしましたので、その流れで脳卒中と心臓病対策は既に法律化され、国家的に取り組む課題に決まった、という内容も補足的にご紹介しておきます。 個人的に重要な図だと考えていまして、再掲します。 …

健康寿命と平均寿命のgapに潜む闇

健康寿命と平均寿命の差が広がっている、という深刻な話題です。 一般的に寿命といわれるのは、この図の平均寿命になります。 健康寿命とは、日常生活に制限なく暮らせる期間のことです。 上図では、女性では平均寿命が86.3歳ととんでもなく長寿になっている…

その心房細動、本当に無症状ですか?

現代の重要疾患のひとつ、心房細動について、また改めて記載します。 「心房細動ですが、症状が全くないんです」とおっしゃる方はたくさんいます。 健康診断でみつかっただけで、自分では何も感じないんです、というわけです。 人間のからだは急激な変化を敏…

尿路結石は泌尿器科だけの病気にあらず

記憶に残る経験を記します。 もう何年も前から尿路結石を言われていて、今回尿路結石の手術、3回目なんですよね。高齢になって痛みもないから断ろうかと思っています。 もともと内科には、高血圧で通院されていた方。こんな会話を診察中に耳にしました。 こ…

タンパク質は99%の人が足りていない(タンパク質はお金がかかる)

前回はカロリー計算についてまとめました。 おそらく、自分も含めて、いまの日本に住んでいる人のほとんどが、カロリーを過剰に摂取しています。 カロリー摂取量には、前回ご紹介した標準体重による計算値以外にも、年齢による補正が必要だと思います。 成長…

ダイエットは数字で解決できる(あとは強い意思)

ダイエットに関しては、なんとなくやってもうまくいかないことが多いと思います。 なので、まず、標準体重を計算してください。 (標準体重kg)= 身長(m)× 身長(m)× 22 です。 身長が150cmであれば、150㎝が1.5mに換算されるので 標準体重(kg)…

【特定保健用食品(トクホ)】に血圧を下げる効果はあるのか

特定保健用食品(トクホ)に血圧を下げる効果があるのか、という内容です。 高血圧に対する効果を謳っているトクホには、ペプチド、杜仲葉配糖体、酢酸、γアミノ酪酸、フラボノイドなどといった成分が含まれていてます。 難しい内容は飛ばしますが、それぞれ…

【予防接種】インフルエンザ・まとめ

インフルエンザ予防接種の季節になり、いろいろと知識を求められる場面が増えましたので、自分の知識の整理を含め、インフルエンザ予防接種についてまとめてみました。 まず、インフルエンザウイルス感染症ですが、 インフルエンザウイルスに感染して平均3日…

冠動脈疾患発症予測ツール 【これりすくん】

日本動脈硬化学会がなかなか便利な冠動脈疾患発症予測ツールを提供してくれています。 冠動脈疾患発症予測ツール 【これりすくん】 というものです。 冠動脈疾患とは、簡単に言うと心筋梗塞と狭心症です。 冠動脈疾患発症予測ツールとは、心筋梗塞予測ツール…

運動してはいけない条件(筋トレ編)

筋力を強化するためには、ウォーキングや自転車のぺダリングといった有酸素運動だけではうまくいきません。 繰り返しになりますが、有酸素運動は心肺機能強化、レジスタンストレーニング(筋トレ)が筋力強化です。 だいたいのことは有酸素運動の禁止事項と…

腎臓病の血圧はどうするか

先に結論を書いてしまいます。 慢性腎臓病の血圧コントロールは 蛋白尿がある場合:130 / 80 未満に下げる 蛋白尿がない場合:140 / 90 未満に下げる 軽度の腎機能低下、蛋白尿(アルブミン尿)があると、脳卒中・心筋梗塞を高い確率で発症することが明らか…

日常診療には矛盾が多い(理不尽さも)

先日も午前中だけで、高血圧で未治療の方が10名ほど来院されました。 高血圧のガイドラインについて詳しくご説明すると、治療を積極的にやっていきたいというかたが多いです。 (高血圧では死亡率が上がるのですから、あたりまえですかね) しかし、丁寧に説…

脳卒中・心臓病の血圧コントロール

高血圧の定義をおさらいをします。 血圧:140 / 90 以上 ⇒ 高血圧 血圧:130~139 / 85~89 ⇒ 高値血圧 血圧:120~129 / 80~84 ⇒ 正常高値血圧 血圧:119 / 79 以下 ⇒ 正常血圧 でした。 予防の観点からは 血圧が140 / 90 以上で脳卒中・心筋梗塞などの心…

日本の高血圧は4300万人

前回は高血圧の定義をまとめました。 今回は日本の現状をみてみたいと思います。 まず、40歳から74歳では、男性の60パーセント、女性の41パーセントが高血圧の基準を満たすようです。 これはかなりの数になりますよね。 さらに75歳を超えると、男女ともに70…

高血圧の数値基準をはっきりさせます

高血圧診療ガイドラインが改訂され、今回高血圧診療ガイドライン2019として発刊されました。 前回は2014年でしたので、5年ぶりの改訂になります。 高血圧などの授業をさせていただいている手前、前回のガイドライン2014はあたまに入っているつもりでしたが、…

透析治療に腹膜透析という選択肢

腎臓専門医ではない内科医にとって、腹膜透析は馴染みがなく、過去のものという認識を持っていましたが、専門家の意見を聞いて考え方が変わったという話です。 おそらく一般的にイメージされる透析は、腎臓の病気で腎臓の機能が低下し、からだのなかの老廃物…

職業運転手の方には睡眠時の無呼吸検査を

長距離バスの運転士(職業運転士)の方々には、睡眠時無呼吸症候群の検査の義務付けはされたのでしょうか。 長距離バスだけではなく、タクシーの運転手のみなさんもですし、航空機のパイロットや、もしかしたら医療従事者も、検査の義務づけが必要になるかも…

心房細動はハイリスク疾患です

健康診断の心電図で、心房細動と診断されてそのまま様子をみている方はどれくらいいらっしゃるのでしょうか。 心房細動は無症状でも、脳梗塞、心不全を高率に起こします。 また、認知症の原因になると言われています。 特に脳梗塞は一度発症してしまうとなか…