予防医療のランダム・ウォーカー

内科専門医のblog 〜予防に勝る治療なし〜

睡眠障害とうつ病(当直・夜勤制度の限界)

 

睡眠とメンタルについて、少し調べてみました。

上図は各国の平均睡眠時間のデータです。男女とも日本は睡眠時間が少ない傾向にあります。

 

睡眠がからだの修復や免疫に関与していることは前回も触れましたが、インフルエンザウイルスの感染について。

睡眠が十分とれている人はウイルスに接触しても発症しなかったのに対し、睡眠不足のひとは、ウイルスに感染したあとに発症する割合が高いという結果を示していました。

 

また、長期にわたる睡眠不足はホルモンの増減の影響で肥満を起こし、高血圧、心筋梗塞脳卒中の原因となります。

 

免疫に関与が強ければ、もしかしたら、がんの発症にも少なからず関与している可能性も否定はできません。

 

メンタルに対する睡眠不足の影響ですが、質の悪化した睡眠状態を起こす原因としては、精神的なストレス、独身であること、仕事への不満感、寝室の環境不良が主なもので、一般的に言われているカフェインやアルコールの摂取は無関係らしいです。

 

健常な睡眠の人に比べ、慢性的に睡眠の不足がある人は、うつ病の発症率が有意に高いという結果が多数あります。

(あるデータでは、うつ病の発症:健常睡眠 6% vs 睡眠不足 36%)

 

また、他国のデータにはなりますが、睡眠の質の低下は自殺のリスクも高めてしまうという結果もあります。

 

ということで、薬をのみはじめる前に、生活の中で適切なタイミングで十分な睡眠時間を確保することがまずは大事。

 

なのですが、わかってはいるが眠れない人が多いんだと思います。

 

前回もふれましたが、睡眠には適度な身体疲労が欠かせません。身体疲労を得るには、運動量を意図的に上げないといけません。

 

結局、精神疾患は適切な有酸素運動と筋力トレーニングを継続することで、治療できるものなのかもしれません。

 

動物である「ヒト」は、植物と違ってもっと動く必要があります。

 

これほどメンタルが増加したのは、運動不足を背景とした社会構造の変化も一因となっています。

 

 

さて、今回調べた複数の文献には「医療関係者はこれらの睡眠の知識をもって業務にあたるべき」、といったまとめがありましたが、医療関係者こそ、不規則交代勤務や当直で36時間睡眠なしなどの異常な条件で働かされていますから、最もリスクにさらされている職種といえます。

 

心情的に、最も睡眠が必要な職種の人が、他のひとに睡眠指導をちゃんと行えるでしょうか。

 

自分は寝ていないのに、他人にはもっと寝てくださいというのは結構難しいと思います。

 

医療関係者のうつ病は意外に多いのではないでしょうか。