予防医療のランダム・ウォーカー

内科専門医のblog 〜予防に勝る治療なし〜

精神疾患には睡眠が関与している説を考える

睡眠不足がうつ病などの精神疾患の原因となっているという話題です。

 

精神科専門の先生方が、睡眠不足がうつ病などの精神疾患の原因となっている。抗精神薬を内服するまえに、睡眠を整えることが大切だというのです。

 

睡眠を整えるとは、睡眠時間の量と質の2面性があるように思います。

 

日本人の睡眠時間は平均7時間30分程度といわれていますが、50年前と比較して、現在は約1時間少なくなっているといわれます。

一日1時間睡眠が減少すると、単純計算で一年で360時間程度の睡眠時間が削られることになります。

 

また睡眠の質に関しては、熟睡ができているかということ以外に、いつ眠っているかというポイントも重要です。

 

基本的に、夜勤という仕事は、睡眠と覚醒のリズムを狂わせてしまうので、本来は存在しない方がベターなのです。

 

夜勤があっても、仮眠をとれる状況にあるのであれば積極的にとることが良いと思います。

 

睡眠が十分とれている気がするのに、睡眠時無呼吸症候群等の疾患を合併していれば、眠れていないことにもなります。

(場合によっては夜間頻尿を起こす病気も、睡眠不足の原因となるでしょう)

 

睡眠時間は8時間、暗くなったら寝る、明るくなったら起床する、いびきや無呼吸を家族に指摘されたら、睡眠時無呼吸症候群の存在を疑う、といったところでしょうか。

 

睡眠は脳内の老廃物を除去する時間、という研究結果の記事がありましたが、全くその通りだと思います。その時間が不足すれば、脳のネットワークに障害が生じても不思議はありません。

 

あかちゃんは眠くなると機嫌が悪くなって泣く、というのも脳内に老廃物がたまった結果なのでしょう。

 

こどもも睡眠時間が少ないと、機嫌が悪い傾向が強い印象をお持ちの方も多いのではないかと思います。

 

どんな化学物質が脳内の老廃物となっているのでしょうか。

 

仮に、Aという老廃物がたまると⇒うつ病になりやすく、Bという老廃物がたまると⇒不安神経症になりやすい、といったように、一対一の対応まではいかないまでも将来的にそういったものまで分かれば、治療薬がもっと原因に合った進歩を遂げるのかもしれません。その点は非常に楽しみです。

 

また、脳内の老廃物ばかりではなく、身体的な老廃物に対するメンテナンスも、睡眠中に行われていることは明らかです。

 

睡眠不足では免疫力が低下することが示されています。ダメージを受けた細胞が修復されたりするのも睡眠中です。

 

かぜをひいたら、栄養(エネルギー)をとって寝ているのが一番だ、というのも、からだの活動性を抑えてエネルギーを無駄遣いせず、そのエネルギーをからだや脳の修復に全て使用して治す、ということなのでしょう。

 

個体差はあるとは思いますが、睡眠は無駄な時間ではなく、からだとそれを司る脳の機能を高めるものです。

 

そうはいっても、なかなか眠れない、寝付けないという人も多いのかもしれません。

 

睡眠には身体的な疲労が必要なので、これも結局、運動不足が根本的な原因となっている可能性があります。

 

運動不足  ⇒ 睡眠に必要な身体疲労の不足  ⇒ 睡眠不足  ⇒ 脳内に老廃物の貯留  ⇒ 精神疾患を発症

 

以上の仮説を自分のなかに立てました。

 

当然専門家ではないので、完全に仮説ですが、それほどかけ離れたものではないと思います。

 

今後検証可能なデータや研究などがあれば、またご紹介します。