予防医療のランダム・ウォーカー

内科専門医のblog 〜予防に勝る治療なし〜

タンパク質は99%の人が足りていない(タンパク質はお金がかかる)

前回はカロリー計算についてまとめました。

 

おそらく、自分も含めて、いまの日本に住んでいる人のほとんどが、カロリーを過剰に摂取しています。

 

カロリー摂取量には、前回ご紹介した標準体重による計算値以外にも、年齢による補正が必要だと思います。

 

成長期にはどんなに大きなカロリーを摂取しても、全てが成長に使用されたので問題にはならないのですが、成長期が終わると、成長に使用されていたエネルギーが余ってしまうため、その余ったエネルギーは脂肪細胞としてからだに貯蔵されます。

 

人類の進化は飢えとの戦いだったので、本来は少しのエネルギーもからだの外には漏らしたくない。

 

そこで、食べ物がなくなったときに備えて、脂肪として蓄えます。

(脂肪はエネルギー効率が高いのです)

 

基本的に食べ物がなくなることがない社会になってしまっていることに加え、運動をする機会まで少なくなった人類は、一旦脂肪細胞に変化したカロリーを消費することが難しくなりました。

 

これが肥満の本態です。

 

そうなると、まず大量のカロリーが消費されなくなり糖尿病に。(糖尿病になると、いずれ眼の血管が切れたりして失明したり、腎臓が悪くなり透析になるリスクも格段に高くなります)

 

また、カロリーは脂肪に変換されるため、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)の上昇が起こります。

 

悪玉コレステロールは動脈の壁に動脈硬化を起こし、心筋梗塞狭心症脳梗塞を起こす原因となることがはっきりわかっています。動脈硬化は高血圧の基盤でもあります。

 

すべて、繋がっているのです。

 

また、脂肪細胞は発がんとも関係している、といわれています。

 

この悪循環を断ち切らないと、永遠に病気のリスクにさらされることになります。

 

どうすれば、悪循環を断てるか。

 

カロリー制限して、タンパク質を増やせばいいのはそうなのですが、実践すると大きな問題にぶち当たります。

 

それは、お金が結構かかるということです。

 

タンパク質メインの食事は、例えばお米をメインにした食事よりもカロリーが格段に低いのですが、カロリーが低いということは、お米をメインにした食事よりも満腹感が得られにくいので、満腹感を得るには、タンパク質摂取量をそれなりに上げていかなければなりません。 

 

そうすると、タンパク質は値段がお米よりも高いので、金額が跳ね上がります。

 

(ステーキよりも、ライスの方が安くてカロリーは高いということです。ライスと同じカロリーをステーキでまかなおうとすると、ステーキ何枚になるでしょうか)

 

タンパク質は最低、体重(キログラム)× 1 グラム=一日のタンパク質摂取量(グラム)で計算しますが、ダイエットに運動を組み合わせていくことが多いと思いますので、もう少し摂取量は多くしないといけないと思います。

 

(一日摂取タンパク質量)= (体重)× 2 グラム 程度で計算すれば良いかと思います。

 

体重が50㎏の人では、一日100グラムということになります。

 

一日100グラムというのはなかなか摂れる量ではありません。

 

以下に、主な食事のタンパク質量を参考に挙げます。参考にしてみてください。

 

スパゲッティ:800キロカロリー(600~800):塩分4.3グラム:タンパク質13g

ピザ(小):600キロカロリー:塩分3グラム:タンパク質38g

グラタン:700キロカロリー:塩分4グラム:タンパク質28g

ハンバーガー:300キロカロリー:塩分1.5グラム:タンパク質20g

カレー:900キロカロリー:塩分3.5グラム:タンパク質21g

オムライス:850キロカロリー:塩分3.6グラム:タンパク質28g

ハンバーグ定食:1100キロカロリー:塩分8グラム:タンパク質47g

ステーキ定食:1000キロカロリー:塩分6グラム:タンパク質45g

ラーメン:500キロカロリー:塩分6グラム:タンパク質21g

チャーハン:700キロカロリー塩分2.6グラム:タンパク質18g

ギョーザ(10個):400キロカロリー:塩分1.5グラム:タンパク質17g

麻婆豆腐定食:650キロカロリー:塩分3.2グラム:タンパク質30g

中華丼:850キロカロリー:塩分3グラム:タンパク質21g

牛丼:900キロカロリー:塩分3.8グラム:タンパク質18g

かつ丼:900キロカロリー:塩分3.5グラム:タンパク質33g

天丼:800キロカロリー:塩分3グラム:タンパク質23g

刺身定食:500-600キロカロリー:塩分5グラム:タンパク質42g

生姜焼き定食:800キロカロリー:塩分1.6グラム:タンパク質29g

さんま塩焼き(単品):300キロカロリー:塩分1.8グラム:タンパク質13g

そば系:400キロカロリー:塩分2.7グラム:タンパク質16~22g

うどん系:500キロカロリー:塩分5.5グラム:タンパク質6~10g

やきそば:600キロカロリー:塩分3.5グラム:タンパク質15g

から揚げ弁当:700キロカロリー:塩分3.3グラム:タンパク質24g

幕の内弁当:800キロカロリー:塩分3.8グラム:データなし

カップラーメン:500キロカロリー(商品によるが、多いものだと800キロカロリーも):塩分5.5グラム:タンパク質10g

おにぎり(一個):200キロカロリー:塩分2グラム(平均):タンパク質3g

 

ダイエットの観点でコストパフォーマンスが高いのは、カロリーが低くて高タンパクの【刺身定食】と【麻婆豆腐定食】ですが、刺身定食は塩分が厳しいですね。しょうゆ抜きにすればいいんでしょうけど、しょうゆ抜きの刺身定食もなかなか厳しいものがあります。

 

こうやってみると、ダイエットに必要な【低カロリー・高たんぱく】を達成できるメニューというのは外食産業にはほぼ存在しないことがわかります。

 

50キロの人が、一日のカロリーが1000キロカロリー、タンパク質が100グラムを3食食べて達成させるには、意図的に選択して食べなければいけません。

 

(これに塩分6グラム未満なんて言われたら相当厳しいことがわかると思います)

 

出されたものをただ、盲目的に食べていては動物と一緒です。

 

食べたい欲求以外に、そこに思考があるかないか。です。

 

ハンバーグ定食のごはんを半分しか食べないようにすれば、カロリーを500キロカロリーに抑えて、タンパク質は40g程度はとれるかもしれません。

(ごはんにもタンパク質が入っていますので、差し引きました)

 

ある糖尿病専門医の先生は、出前でカレーを頼んで、ライス抜きで食べているそうです。これはすごい話ですが、お米は毒だと言っていました。

 

当時はやばい先生がいるなと思っていましたが、その意味がいまは(少し)わかるようになりました。