白衣高血圧とは、診察室では高血圧となるが、診察室以外の自宅等では正常な血圧を示す場合をいいます。
これまで、白衣高血圧はそれほど問題はない、とされてきました。
実際にいまでも、多くの先生が自宅での血圧が問題ないなら病院で160でも大丈夫ですよー、といった会話をしているのを耳にすることがあります。
これは本当なのでしょうか。
いくつかの研究結果をまとめたものがありますので、以下に示します。
1、白衣高血圧の場合、高血圧でない人と比較して脳心血管病発症のリスクが高かった。
2、白衣高血圧の場合、高血圧でない人と比較して、脳卒中の発症・死亡率が高かった。
3、白衣高血圧の場合、高血圧でない人と比較して、心疾患の発症・死亡リスクは同等であった(差がなかった)。
4、白衣高血圧のひとは、その後持続的な高血圧になる場合が多かった。
まとめると、
病院や診察室でのみ血圧が高い【白衣高血圧】のひとは、血圧正常者と比べ、脳心血管イベント発生のリスクが高い。
また、持続性の高血圧に移行する可能性が高く、注意深い観察を行っていくべき。
ということになっています。
(追記します。この内容は高血圧治療ガイドライン2019を引用しています。興味のある方は是非ご確認ください。個人の勝手な考えではありません。)
今回の話題ここからが問題です。
クリニックや病院で血圧が高いだけのひとが、次に病院やクリニックを訪れるのはいつか、ということです。
健康診断の時でしょうか。
その時に血圧がまた高くても、「いつもよ、いつも」「病院とかだと高いんだよね」「先生から自宅の血圧が問題ないなら大丈夫って言われてるから」となってしまいます。
確かに、医師から「自宅での血圧が問題ないなら病院で160でも大丈夫ですよー」と言われてしまったら、その後血圧で通院しないことの方が多いでしょう。
自宅で測定し続けていれば良いのですが、測定をやめてしまうという場合の方が多いのではないでしょうか。
そうすると、白衣高血圧は脳心血管系の病気の発症リスクが高い、というエビデンスは全く知られないまま、脳心血管系の病気の発症をただ待つことになりかねません。
病院での血圧が高くても、自宅での血圧が大丈夫だから問題ないですよ、という内容は昔はそういわれていたのかもしれませんが、それはデータが十分なかったからで、現在の医療レベルでは正しくないということです。
今回はこのよくある誤解について、問題提起しました。
※追記します。
不安を煽るというコメントをいただきました。ありがとうございます。
不安を煽るというのは、科学的根拠のないことをいろいろと説明して不安にさせる【商法】については当てはまるかと思いますが、今回の内容は科学的にある程度証明されている内容で、個人的な考えではありません。
客観的な事実です。
予防医療とは未来をある程度予測するものですから、期待を感じる方もいれば、不安に思う方もいらっしゃるのは当然のことですが、これからは予防医療の時代になりますので、こういった議論が当たり前になると思います。