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内科専門医のblog 〜予防に勝る治療なし〜

C型肝炎治療薬【マヴィレット】

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今回は、2018年度の国内で売れた薬剤についてみてみました。

 

第一位はマヴィレットというC型肝炎の薬です。

(2017年11月発売)

 

このマヴィレットですが、グレカプレビルという薬剤とピブレンタスビルという薬剤の合剤になっており、

 

簡単にいうと、C型肝炎ウイルスを体外に排出する薬です。

 

数年前にC型肝炎の詳細を学習した際には、ハーボニ―という、レジパスビルという薬剤と+ソホスブビルという薬剤の合剤が出たばかりでしたが、気がつけば今はこのマヴィレットが主役に置き換わっているということです。

 

医療分野の情報の流れの速さを感じます。

 

ちなみにこのマヴィレットというお薬ですが、1錠が2万4210円で、一日に3錠内服のようですから、一日に7万円以上かかるわけです。

 

これを8~12週間内服したらC型肝炎ウイルスを排除できるのであれば、将来の肝がんリスクが低下するはずですので、費用対効果は良いのかもしれません。

 

ちなみに12週間内服した場合は、610万1020円だそうです。

 

 

C型肝炎ウイルスは、そのタイプによって薬剤が異なったりしていたと記憶していますが、このマヴィレットはあらゆるタイプのC型肝炎ウイルスに使用できるそうです。

 

また、従来のインターフェロンという治療薬を使用しなくても良いことで、副作用の心配も軽減されているようです。

 

前述したハーボニ―という2015年に発売された薬剤は、腎臓の機能が悪い方には使用できなかったはずですので、このマヴィレットはこの点も優れています。

 

そういったことから、現在最も売れている薬剤になっているのではないでしょうか。

 

 

専門外の領域の治療薬の変化には、正直ついて行けません。

 

海外留学した医師は、2年海外で過ごして日本に戻ったら薬が変わりすぎていて全くついて行けないとよく言います。

 

日本にいて定期的にチェックテストを受けたりしていても、こういった専門外の事に関してはup dateが難しいと感じます。

 

今後、専門分化が進むし、進まないといけないのです。

 

なんでも診れるは、なにひとつ診れないと思う根拠はここにあります。

 

 

※C型感染ウイルス感染症について

 

最後に、C型肝炎ウイルスを治療する意義についてサマライズします。なんでC型肝炎治療をしている人が増加しているのかということを考えます。

 

C型肝炎ウイルスは肝がん発症の原因になります。

 

C型肝炎の感染ルートは血液を介したもので、輸血、医療事故による針刺し、透析患者、刺青、ピアスなどです。

 

C型肝炎ウイルスにはタイプがあり、日本人は80%がジェノタイプ1、20%がジェノタイプ2になります。

 

C型肝炎ウイルスに感染すると、30%は急性肝炎になりますが、その他の多くが持続感染し、慢性肝炎、肝硬変、肝がんへと進展します。

 

ですので、今回取り上げた治療の目的は、繰り返しになりますが、肝がん予防です。

 

 

学生の頃は治療の著効率(SVR)が40%程度だった世界なのに、現在では99%とは本当に驚きです。

 

C型感染は一度感染したら排除できない時代は終わった、ということだと思います。

 

自分も勉強になりました。

 

また、この売り上げトップ20の薬剤については、整理して内容を確認していきたいと思いました。

おそらく現在の医療の最先端と、社会保障の問題点が見えてくると思います。

 

大腸内視鏡検査(大腸カメラ)はいつ受けるべき?

大腸内視鏡検査は、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)よりも受ける機会は少なくなると思います。

 

実際に、自分が今後受ける場合どういった基準で考えていったらよいのか、消化器外科専門医の先生に聞いてみました。

 

 

一般的に日常診療で大腸カメラをお勧めする場合は、患者さんから便に血が混じっているというように、実際に症状や現象を言われた時、または、原因不明の貧血が進行している場合のふたつが多いのではないかと思います。

 

あと多いのは、大腸がん検診でよく行われている便潜血反応検査という検査で陽性だった場合にも、大腸カメラをお勧めすることになります。

 

 

ただし、この便潜血反応検査が陽性であった場合でも、大腸がんのリスクは3~5%程度と言われています。

 

つまり、便潜血反応検査で引っかかって大腸カメラを受けましょうと言われた段階では、その95%は大腸がんではない、ということです。

 

 

大腸カメラは胃カメラに比べて負担は多い検査のようですが、

 

一度ポリープも何もないことが確認されれば、3~5年は再度受ける必要はないのではと言われているようです(欧米の基準)。

 

ですので、その消化器専門の先生がおっしゃるには、まずは一度どこかのタイミングで見てみないとわからないよね、ということでした。

 

 

先日見たデータでは、10年間くらいはやらなくてもいいのではないか、というものもあり、このあたりはまだ議論があるところのようですが、一度は受けてみておいた方が無難な検査であることは間違いなさそうです。

 

自分も近いうちに、大腸カメラを受けることをひとつの目標にしていますが、

 

知り合いの先生にお願いするのは何となく気が引けてしまい、どこで受けるかを迷います。

 

内視鏡検査(胃カメラ)はピロリ菌除菌後にこそ必要

上部消化管内視鏡検査(胃カメラ)についての話題です。

 

内視鏡ヘリコバクター・ピロリを除菌したあと、もう胃カメラの検査が不要だと思っている方がかなり多いことに、この一年で気がつきました。

 

胃の中に生息するピロリ菌の有無で、胃がんになる可能性が全然違うという話題は以前にブログに記載しました。

 

ピロリ菌が胃の中にいない人は99%胃がんにはならない、ということも消化器の領域では常識になっているそうです。

 

 

ただし、ピロリ菌が最初からいなかった場合と、除菌したあとでは胃がんの発症率が異なっています。

 

ピロリ菌を除菌後も発がんのリスクは高いので、一年に一回は胃カメラをすることが良いとされています。

 

 

典型例としては、

5年前に胃カメラを他の病院でやった際にピロリ菌がいたので除菌した。

除菌が成功したので、もう胃カメラはやる必要ないと思っていた。

 

といったかんじです。

 

本当にたくさんいらっしゃいますから、ご自分と自分の周りのご家族について、是非確認してください。

 

実際、ヘリコバクター・ピロリ除菌後にちゃんと内視鏡を受けている方は、その一年に一回の定期内視鏡検査で、早期胃がんが発見され、開腹せず内視鏡で治療ができたという例を自分の外来でも複数例経験しています。

 

ただ、今回のこの誤解は結構広く広まっているので、どうしたら多くのひとに周知できるか、ですよね。

 

学会レベルでいろいろ活動しても、ほとんど広まっていないことばかりですから、

今後は情報媒体をどうしていくかも大切なことです。

近隣にコンビニがあると、動脈硬化は進展しやすい可能性

少し面白い研究がありましたので、ご紹介しようと思います。

 

自宅の近くにコンビニがあると生活は便利だが、動脈硬化の予防には良くない可能性があるという内容です。

 

 

約2700名の若年成人を対象に、自宅から3㎞以内の全ての食料品店・飲食店にコンビニやファストフード店がどれくらい占めているか、そして、この2700名の心臓の血管に動脈硬化がどれくらい起こっているのかが調査されました。

 

心臓の血管の動脈硬化をどうやって調べたか、というと、全員のCTを撮像して、心臓の冠動脈という血管の石灰化という現象を調査したようです。

 

 

その結果、近くのコンビニの割合が10%上昇するごとに、動脈硬化病変を発症するリスクが34%も高まるということがわかりました。

 

その一方で、ファストフード店動脈硬化病変の発症については、関連がはっきりしなかったそうです。

 

これはファストフード店よりもコンビニの方が、

 

スナック類が多く、アルコールやタバコが置いてあることも関連したのではないか

 

という結論づけがされているようです。

 

この研究はアメリカで行われた研究で、日本のデータではありませんので、そのまま日本に置き換えることはできないですが、ひとつの可能性としてあたまに入れておく必要があるかなと思いました。

 

コンビニの食品の中には動脈硬化に関連する何かが、もしかしたらあるのかもしれません。

 

コンビニの商品は比較的値段が高いわけで、もともと健康に良いイメージは全くなかったので、それでこういう結果だと、個人的にはますます足が遠のいてしまいそうです。

【未来予測】クリニックはこうなる

クリニックの未来予想をここに書き記し、将来また振り返ったときに、どの程度予測することができていたかを確かめたいと思います。

 

 

【内科・循環器内科】や【内科・消化器内科】といったように内科系で、自分の専門分野をうしろに追加して表示しているクリニックが増えています。

 

また、昔ながらの【内科・外科・皮膚科・循環器科・消化器科・・】とたくさんの標榜をいまだに表示しているところもあります。

 

また、【整形外科・内科】といったように整形外科医であるにもかかわらず、自分の専門分野以外の内科分野まで標榜し、集患を目的としているクリニックも未だに多くあります。

 

 

ひとつの分野の中でも細かく細分化されてきている医療の世界では、今後もそれが細分化・深化していく方向でいくでしょう。

 

ですので、一人の医師が何でもみますという開業は今後激減するはずです。

 

 そして、クリニックは2分化すると予想しています。

 

さまざまな病気はまず診断することが重要で、そこから診断に応じた治療へ、といった流れはかわらないので、 

 

まず、診断に重きを置く診断能力の高い医師が開設する診断系クリニックができていく可能性。

 

また、逆にいろいろな病気の診断に長けている医師というのは、特定の分野の治療までは経験したことがないことが大半なので、

 

診断クリニックで診断がついた段階で、治療技術のある(この場合の治療とは薬物療法を含みます)専門系クリニックに紹介する。

 

専門クリニックにはない、特殊な装置や器具がひつようなものに関しては、総合病院や大学病院に紹介となる、という流れを予想しています。

(逆に、そうでなければ大学病院へはかかれなくなる気がします)

 

総合病院や大学病院は治療に特化していき、外来機能を縮小させる。

 

そのため外来通院が必要な患者さんについては、その病気の種類によって、専門に特化したクリニック(もしくは診断クリニック)で引き続き内服治療を受ける。

 

専門クリニックも、いまのような循環器内科、呼吸器内科、消化器内科という形ではなく、もっと細分化する気がしています。

 

例えば、高血圧専門クリニック、肺がん専門クリニック、内視鏡専門クリニック、コレステロール専門クリニック、心不全専門クリニック、糖尿病クリニック、腎臓病クリニック、不整脈専門クリニック、運動療法専門クリニック、甲状腺疾患専門クリニックなどです。

(いまでもこの傾向は既にあります)

 

整形外科では、高齢化によって需要は多くなると思うので、ライバルとなる整形外科クリニックの数が増加すれば、膝関節専門とか、腰痛専門などのクリニックに分化していくと思われます。

 

もちろん今は医療法の標榜に関する制限があるはずなので、すぐにという話ではないですが。

 

問題点があるとすれば、

 

専門クリニックを受診することで、患者さんが他人の目を気にする、ということが今以上に強くなるでしょう。

そこに行くだけで、その人が何の病気なのかがある程度分かってしまうからです。

立地にも気を遣わなければならないクリニックが出てきてしまうかもしれません。

 

また、診断系と専門系をかねるところも出てくるので、混乱が起こることが当然予想されます。

 

また、この議論で最も大事になるのは、はじめの診断クリニックの存在です。

 

診断クリニックで判断を間違えると、全然違う方向にいってしまうからです。

 

かぜだからどこでもいいやと思っていたら、単なる風邪ではなく心不全だった、なんていうことは日常的にたくさんあります。

 

 

また、最近議論になっているかかりつけ医制度ですが、これも現実化すると考えています。

 (今回の話題での、診断クリニック・専門クリニックがかかりつけ医の役割を果たす可能性があります)

 

個人の自由があるので選択・途中での変更はできるようになると思いますが、

 

国民健康保険(健康保険)で医療を受けたかったら、特定のかかりつけクリニックをひとつ自分で決めてください、というようになるのではと予想しています。

 

いつもは高血圧で通院していて、膝が痛くなったらどうするんだ、という場合は、

 

そのかかりつけクリニックを必ず通して、整形外科にご紹介するというかたちを国は考えているのではないでしょうか。

 

要は自己都合でいろいろなところをドクターショッピングするなら、そこまでは国民健康保険で面倒はみれないです、ということです。

 

昔は自分の都合で行きたいところにいけたのに、という議論が将来起こりそうです。

 

これも社会保険の財源が足りていないので出てきた議論です。

 

 

クリニックを選ぶ際には、繰り返しになりますが、以下の資料は是非参考にしてください。

 

未来のかかりつけ医は、もしかしたらこの名簿内の医師から選ぶこと、という制限がつくかもしれません。

 

税金を使って医療を受けるというのは、本当はこういうことなんだと思います。

 

※総合内科専門医名簿

https://www.naika.or.jp/nintei/seido/meibo/

 

 

 

今回の話題は科学的根拠はありません。

あくまで、日常診療で感じたことをもとにして予想しています。

 

また、本記事で100記事を達成することができました。

 

読んでいただいている皆様からの感想、ご意見などをいただきなんとか100達成できました。

ありがとうございました。

血圧手帳がなくなる日

自分の担当している外来は高血圧、コレステロール異常、不整脈、慢性心不全、虚血性心疾患の順に患者さんが多く、

 

特に、他の内科外来で血圧のコントロールがつかない方を担当させていただくケースが多いです。

 

一応循環器内科としていますが、外来ではその絶対数から、高血圧専門外来に近い状況になっています。

 

高血圧のコントロールを行う際に、大切なのは自宅での血圧測定です。

 

以前にも書きましたが、一般的に高血圧の基準は 140 / 90 以上 ですが、

 

家庭での血圧の基準は、135 / 85 以上 が高血圧と定義されています。

 

この数値を極力下回るように工夫をしていく仕事が、外来では多いです。

 

 

この家庭での血圧の確認方法ですが、一般的には【血圧手帳】というものを患者さんにお渡しし、そこに家庭での血圧の数値を書き込んでもらい、外来受診の際に持ってきてもらうという方式が、日本全国で行われているかと思います。

 

最近はスマートフォンなどに記録してこられる方もだいぶ増えましたが、それでも70歳以上の方はやはり紙媒体が主になります。

 

血圧手帳は毎日記載していくため、数か月でいっぱいになり書くところがなくなると、次の手帳をお渡しするというのが通常のやり方なのですが、

 

この最近、血圧手帳が手に入りにくくなっているのです。

 

血圧手帳の入手ルートは製薬会社の場合が多いそうですが、製薬会社からの供給がなくなりつつあるため供給が激減しているのだろう、ということでした。

 

これは、製薬会社が途中に介在することで、特定の薬剤をひいきするようなことはあってはならないという観点からの措置ではあるのかなとは思います。

 

ただ、外来中に患者さんにお渡しする血圧手帳がありません、と言われて直感的に何となくふと思ったのは、血圧手帳すら渡せないくらい日本が貧しくなっているのでは?でした。

 

製薬会社もジェネリックの台頭で、昔のように売り上げは伸ばせなくなっているでしょうし、その中から薬の開発費用を出していくのはかなりきついのではないかと思います。

 

もし仮に血圧手帳を出せなくなるほど、血圧の薬に売り上げがないとしたら・・

 

血圧手帳の廃止が日本の衰退の一部を反映しているのでは、と思いながら外来を続けた一日でした。(かなりおおげさですが)。

 

 

最後に本文とは関係のない内容ですが、今日の外来では珍しくlongRP'というやや特殊な頻脈の方を担当しました。

 

鑑別診断がやや複雑になるケースですが、ご本人の症状が動悸ではなく、立ちくらみでした。

(long RP'頻脈はだいたいの場合ですがfast/slow AVNRTかATです。だれも気にならないとは思いますが、一応記載しました)

 

心電図とってみないとわからないことは多いなあと、再確認させられました。

 

 

また、以前より動悸がするけれど、不整脈がつかまっていない方も、根気よく検査を繰り返したところ、本日ようやく心房細動を心電図で記録できました。

 

不整脈は医師と患者さんがどれくらい根気強く、検査を繰り返せるかが全てな気がします。

 

今日もひとりの方の脳梗塞発症を予防できました。

 

運動は高齢者にほど勧めたい

運動は高齢者ほど有効だと思います。

 

入院中の心臓病の高齢者の方には、ベッドサイドでの簡単な筋トレから開始することが多いです。

 

簡単な踵上げ、ゴムバンドやチューブをベッドの柵に結んで、手足で引っ張るようなトレーニングなどが代表的です。

 

ストレッチによる関節可動域訓練も開始します。

 

そこから少し進むと、廊下の歩行を開始することが多いと思います。

 

安全に運動ができることがある程度わかれば、リハビリ室に移動して、エルゴメーター負荷を始めます。

 

運動前後には必ず血圧、心拍数、体温をチェックします。

呼吸数も実は大事です。体調が悪い時、病状が悪い時は呼吸パターンが浅く早くなっていたりします。

 

エルゴメーターとは自転車こぎのことですが、なぜ歩いたり、走ったりをいきなりさせないかというと、転倒のリスクがあるからです。(個人的な考えです)

 

ご高齢の方がトレッドミル(ルームランナー)で後ろに飛ばされて怪我をする例もありますから、慎重になるべきかなと思います。

 

エルゴは負荷を簡単に調節できるのも良いところです。

 

この段階になると、ハーフスクワットもできるようになることが多いので、ハーフスクワットを開始します。 その後レッグプレスなどに移行します。

 

さて、有酸素運動と筋トレですが、ご高齢の方は心肺機能がだんだん落ちてくるため、まずは心肺機能を高めることのできる有酸素運動を中心にしていただいた方がよいかなと思います。

 

院内、もしくはジムに通えるのであればエルゴメーター、日常に馴染むのはウォーキングです。

 

筋トレももちろん大事ですが、筋トレは筋肉量を増やす効果のみで、心肺機能の向上は得られないのでうまく使い分けるべきです。

 

超高齢者であれば、筋トレで筋肉量を増やしてからの方が転倒のリスクが低下しますので、たしかにはじめは筋トレがよいですね。

 

みなさんの周りのご両親などはもちろん、自分自身にもmodifyして是非応用していただければ幸いです。

 

体力が低下しているほど、驚く程の効果が得られることが多いです。