予防医療のランダム・ウォーカー

内科専門医のblog 〜予防に勝る治療なし〜

運動は暖かくなってから始めます問題を考える

運動療法は、さまざまなメリットがあり、副作用がないことが最大のウリです。

 

たくさんのメリットがあって、場合によっては内服薬を減らす効果もある運動をなかなか続けられないのは、どうも以下の理由があるようです。

 

 

理由1、季節に四季がある。

 

理由2、単純な運動で面白みがない。

 

理由3、からだのどこかに痛みがある。

 

 

理由1は、ほとんどの方が対峙する壁になります。

 

例えば、今の冬の時期に運動をはじめましょうというお話をすると、50歳以上の方だとだいたい返ってくるお答えが、

 

今は寒いから暖かくなってから運動します、ウォーキングします、です。

 

では春から開始できるように今から少しずつストレッチからやっていきましょうと促しても、4月になり改めて運動の話をすると、まだ寒い日が多いからもう少し暖かくなってから、とおっしゃいます。

 

次に外来でお会いするのがだいたい6月頃です。

 

どうでしょうか?とお聞きすると、

 

少しやっていたんですが、今度は暑い日が多くて、熱中症になりかけた。

 

今はできないとなります。

 

これが運動がいつまでたってもできない方の典型的なパターンです。

 

暑いので夏も運動できず、また秋になり、じゃあやってみましょうか、9月、10月軌道に乗り始めたところで、11月で寒くなり、運動終了となります。

 

 

次に理由2の、運動に面白味がないという点ですが、これには工夫が必要かなと思います。

 

ウォーキング中には本当はやらない方がいいんでしょうけれど、自分の場合は音楽を聴くことはモチベーションを高めてくれる要素になると思います。

 

もう少し有酸素運動に自信がついて来れば、やはりゲーム性のある運動に移行できないかを考えます。

 

ゲーム性が高いとは、例えば市民レベルのバスケットボールのチームに参加してみるとか、テニスをやってみるとかです。

 

楽しみながら運動ができるというのはやはり一番効率が良いと思いますし、継続も比較的容易です。仲間ができるとなんとか続けていけたりもします。

 

 

具体的に体力がついたことを客観的データ化することも、モチベーション維持には有効です。

 

例えば、大腿周囲径を測定して、3か月後、6か月後の変化を確認したり、体重の増減を測定してみるでもいいでしょう。

 

最も正確な評価をするのであれば、心肺運動負荷試験(CPX)という検査を行って、運動する前と3か月後、6か月後での評価をしてみることです。

 

現在の体力、呼吸機能、心機能、骨格筋の機能を一度に評価できてしまうので、

 

本来であれば、運動する前にはこの検査を全員が受けた方が良いのですが、なかなか普及していないのが現状です。

結果の分析にやや専門的な知識が必要になるからでしょうか。

 

個人的には、いつかクリニックのレベルで導入してみたい検査です。

 

さて、最後の理由3ですが、からだの一部に痛みがあるというのは結構ある状況です。

 

例えば膝に痛みがある場合。 本人も運動すると痛むので、その時点ではまず運動習慣はありません。

 

ただ、そのまま動かないと関節可動域もどんどん低下して老化する一方ですから、足が痛ければ、発想をかえて、腕の筋力トレーニングや有酸素運動でも良いのです。

 

ひとりで運動をずっと継続していくのは、客観的評価という意味でも難しくなってくる場合があります。

 

患者さんであればそういったリハビリ専門の医師やスタッフに、一般のかたでも可能であればそういった専門知識をもったスタッフのもとで継続すれば何倍もの効果が得られるのではないでしょうか。

 

 

運動を継続できるか、そうではないのかは、今回挙げた3つの理由をクリアしなければ難しいといつも感じます。

 

いつもそこを一押しできるように心がけていますが、最終的には本人の性格やキャラクターによる気がしています。

 

やる人はやるし、やらない人はやりません。

毎日の運動療法をupdateしていく

今までに何度も、予防医療に対する運動の役割、重要性を書かせていただきました。

 

運動の良さは副作用がなく、薬などと同等もしくはそれ以上の効果が得られることにあります。

 

心肺機能が高まることはもちろん、認知症予防、うつ病の予防と治療、大腸がん予防、糖尿病の治療など、挙げればキリがありません。

 

心不全の治療に運動療法が必須であることも、以前強調させていただきました。

 

運動すればなんとなくからだに良いだろうな、という印象はみなさんがお持ちかと思います。

 

直感的にそうだと思えると思いますが、運動療法の効果はデータに裏付けされたしっかりした根拠が、既に何度も何度も証明されています。

 

というわけで、なんとなくお勧めしている訳ではありません。

 

間違いなく良いことが証明されているからお勧めしています。

 

さて、本題になりますが、患者さんを含めた周りの方々に、運動しましょう、運動は良いですと言っても、実感がないとそれは相手にはなかなか伝わらないものです。

 

感動は伝えたがる、といいます。

 

同じことを言っていても、そこに自分の感動や感情が乗らないと、相手には全く伝わらないし、相手の行動変容にもつながりません。

 

そこで、昨年から時間を見つけて曖昧にやっていた運動を見直し、やることを決めて、しっかり記録をとることを継続しました。

具体的にどういう運動をしていったのか、参考になれば幸いです。

この程度でいいのかと思ってもらい、さらに運動療法が広がっていくことに貢献できればと思います。

 

まず、運動前にはバイタルサインをチェックします。

バイタルサインとは、血圧と心拍数、あとは(忘れなければ)体温と体重を記録します。

 

具体的なメニューですが、ウォーキングする時間を確実に毎日とることができなかったため、車を使わず、最寄り駅から20分から30分程度のウォーキングを強制しました。

 

なんでもかんでもやると続かないので、メニューを下半身に絞りました。

 

ハーフスクワットを1日30回、壁に手をついて踵上げを30回、関節可動域を広げるために、主に肩甲骨周囲と、股関節を中心にストレッチするという、心不全の患者さんに対して実際に行なっているメニューからスタートしました。

 

その後回数を徐々に50回、70回と上げていきました。

 

ちょうど1年たち、現在は1日ハーフスクワット200回、踵上げ200から300回、ストレッチ、フルスクワット30回を最低ラインにして、現在も毎日継続中です。

 

現在は、ウォーキングよりもやや強度の高い有酸素運動にしたいとの考えから、なわとびを導入しました。

(なわとびは小学校以来?で、一番きついです。)

 

カロリー制限をして体重や採血データには改善は見られたものの、カロリー制限をすると免疫力低下の実感があり、最近はカロリー制限はゆるくしました。

 

カロリーは程々にとり、運動でそれをフルに使い切る戦略に変更しています。

 

毎日筋トレは逆効果では?というご意見もあるかと思いますが、このような軽負荷の筋トレで、しっかりとタンパク質が摂れていれば、あとは個人のキャラクターの問題で継続しやすい方でよいと考えています。

 

マシンを使用した高負荷のトレーニングは、隔日が良いと思います。

 

運動の効果を深く学んでいくと、運動は最強のアンチエイジングになると本気で思います。

 

軽負荷の運動は高齢者ほど効果があるともいわれていますが、若い世代でも十分な効果が得られるでしょう。

 

若い世代の病気はだいたいが運動量の不足に起因していますので。

 

今回提示させていただいた運動メニューは、心不全の患者さん向けの過負荷にならない運動の範囲から開始して、徐々に負荷を上げていった自験例でした。

 

この程度でいいのかーと思っていただきたくて(特に初期の段階)、今回は自分の運動療法をご紹介させていただきました。

なんでも診れる医師はもう存在しえない

クリニックという医療の最前線で日々過ごしている立場から、未来のクリニックはこうなる、という予測をしてみたいと思います。

 

今回の内容は科学的根拠に基づく内容ではありませんので、様々な予想があって当たり前で、みなさまの予想も聞かせて頂けますと大変勉強になります。

 

未来のクリニックはこうあるべき、という自分なりの思いも少し書いていきます。

 

 

昔はひとりの医師がなんでも診るというのが常識で、例えば内科医が内科以外に小児科も診る、整形外科医が内科を診る、心臓外科医が内科でクリニックを開業する、などが当たり前でした。

 

内科には大きく分けて、呼吸器内科、循環器内科、消化器内科、腎臓内科、血液内科、内分泌内科、膠原病内科、脳神経内科といったように細かく分かれています。

 

呼吸器内科は肺炎、肺がんなど

循環器内科は高血圧、コレステロール異常、心筋梗塞狭心症心不全、心房細動など

消化器内科は肝臓、胆嚢、すい臓、胃腸、内視鏡検査など

腎臓内科はその名の通り腎臓病(糖尿病性が多いでしょうか)

血液内科は貧血や白血病、リンパ腫などの血液疾患

内分泌内科は甲状腺疾患、糖尿病など

膠原病内科はリウマチなどの膠原病

神経内科脳卒中脳梗塞脳出血など)神経変性疾患と呼ばれるもの

 

といったように、これだけ見てもかなり細かく分かれます。

 

 

これに外科系もみていきます。

 

呼吸器外科、心臓血管外科、消化器外科(胃腸系と肝臓系に分かれる)、脳神経外科、整形外科、乳腺外科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科などです。

 

外科系は基本オペが仕事です。

 

流れを単純化すれば、内科が診断をつけて外科に紹介し、外科が手術するという仕組みです(例外は整形外科、眼科、耳鼻科)。

 

整形外科、眼科、耳鼻咽喉科にはそれぞれに対応する内科はないので、内科からの紹介というケースは少ないかも知れません。

 

(整形外科に対する内科的な立場にあるのは歴史的に整骨院なのかもしれません)

 

最近は内科医が手術できる領域が増加し、カテーテル内視鏡などで手術をする治療が増加し、これがまた医療状況を変えています。

 

 

最近の医者は臓器ばかりをみて、患者全体を診ていない

という批判をする年配の方もおりますが、これは医療の進歩から考えると仕方がないことです。

 

昔は、現在ある多くの病気が病気として認識されていなかったので、まず病気の数が昔と全然違います。

 

また、治療法も格段に進歩しており、その治療技術を身に受けるまでにそれなりの時間がかかるようになりました

 

 

循環器内科を例に出しますが、30年前には心筋梗塞にはカテーテル治療がありませんでした。

急性心筋梗塞の患者さんが搬送されてきても、血栓を溶かす薬を注射して、助かるのをただ祈るしかなかったそうです。

 

今では考えられないことです。

 

当然救命率も現在よりはるかに低いものでした。

 

現在ではカテーテル治療が当たり前になり、救命率も格段に上昇しましたが、昔の医師を比べても単純に、このカテーテル技術を磨く時間が増えているのです。

 

昔も今も、医師に与えられた時間は一日24時間であることには変わりがないので、

 

どの分野も診れますよという立場で診療していては、最終的にはどの分野も中途半端な知識と経験しかない

 

ことになってしまいます。

 

最近、なんでも診ることがカッコイイという価値観が世の中や若い医師の世代に回帰しているようですが、その立場で進んでいった医師の先はどうなるのでしょうか。

 

なかなか厳しいと思います。

 

循環器専門医である自分ですら、循環器分野を全て100%網羅することができるはずもない時代です。

 

何でも診れますよ、とような顔をするのは時代錯誤かなと思いますが、

 

そこに「なんでも診れるなんてすごい!」と思い込む需要があれば成立する訳で、

 

それで進んでいくと、無駄な検査をたくさんされたり患者さんだけが損をする、しかし、それがわからない患者さんはそれを求めてしまうといった、なんとも不思議な世界になってしまいそうです。

 

そのあたりを明らかにする情報提供をしなければならないと思います。

 

なんでも分かる訳ないんです。

 

これも総合診療科はすごいという編集をしている一部のテレビ番組による悪影響でしょう。

 

ただし、患者さんが次にどこにいった方がいいのかを交通整理をする医師、クリニックは今後必要だとは思います。

 

未来のクリニックは、例えば高血圧クリニック、糖尿病クリニックというようにより細分化され、そこに紹介する交通整理クリニックに分かれると思います。

 

また、詳細に分析してみたいと思います。

心臓弁膜症を注意喚起するCMが最近やたらと多い理由

心臓弁膜症かも?というテレビCMが、この数年流されるようになったのをご存知でしょうか。

 

いままで誰も言い出さなかったことを急に言うようになったのか、その理由を一部の医師はおそらく気がついています。

 

いま、心臓病の世界では、世の流れとして、大きな問題は心不全パンデミックです。

 

にもかかわらず、なぜ心不全ではなく、心臓弁膜症がクローズアップされ、広告費をかけているのでしょうか。

 

ここには、確実にビジネスの匂いがします。

 

最近、海外からカテーテルで心臓弁膜症を治療できるものが次々と日本に導入されています。

経大腿(けいだいたい)アプローチ2

心臓弁膜症は超高齢者の病気であることがほとんどで、いままではオペで心臓を開けて、壊れた心臓の弁を修復するしかなく、その手術に耐えられない方は治療を受けることができませんでした。

 

しかし、このカテーテル治療でいままで治療が受けられなかった超高年齢層にまで治療の幅が広がっています。

 

この市場をしっかりと掴もうという意図が、CMから見え隠れしています。

 

心臓弁膜症は80歳、90歳の方も多く、ある意味では加齢による心臓の弁の老朽化によるものです。

 

そこに多額の医療費を使い、売上を海外のメーカーに取られている現実はなんとも言えない状況に自分には見えます。

もちろん、素晴らしい治療なのですが、、。

 

お金持ちの高齢者層にふんだんに医療費を使い、若い世代の将来の社会保障は減っていく。

 

日本はこのままでいいのでしょうか。

 

難しい問題です。

 

少なくとも、国が借金をしてまで海外メーカーにお金を献上し続ける現在の流れはどうかと思います。

死に直結する家族性高コレステロール血症は、まず存在を認識することから

若いうちに心筋梗塞を起こす、家族性高コレステロール血症を今回ご紹介します。

 

その名の通り、遺伝性の病気です。

 

LDLコレステロールが高い、アキレス腱肥厚(アキレス腱が太い)、家族の中で55歳以下で心筋梗塞を発症した家族がいる、の条件があれば診断されます。

 

エピソードをご紹介します。

 

38歳の男性。これまでにも2回、急性心筋梗塞で入院歴があり私が担当したのが、3回目の心筋梗塞でした。

 

38歳で3回も心筋梗塞を起こすのはまずふつうはあり得ません。

 

急性心筋梗塞は昔より救命率は高くなったとはいっても、一発終了がある怖い病気です。

 

さて、3度目の今回。

 

心電図では急性心筋梗塞の所見もはっきりしていて、1分でも早くカテーテル治療が必要な状況でした。

 

急性心筋梗塞の場合、詰まった血管を可能な限り早く再疎通せよというのが差し当たっての至上命題です。

 

ご家族に病院まで来てもらう時間を無駄にできないので、電話でカテーテルに対する同意をもらうのが通常です。

そこで急いで急患室から電話をしたのですが、「今すぐ行けるから待っていてくれ」と。

 

今の状況では待っていられませんとお伝えしたところ、すぐ行けると・・

 

5分くらいで急患室に来てくれたこの38歳男性の父ですが、なんと本人も2週間前に急性心筋梗塞で入院中だったのです。

 

そのため病棟から車椅子で看護師さんに付き添われ急患室に登場した。というわけでとても強烈なエピソードとして記憶に残っています。

 

ほぼ同じタイミングに急性心筋梗塞を発症した親子は後にも先にもこの一回だけでしたが、このように家族性に、しかもかなり若い段階で急性心筋梗塞を発症する家族性高コレステロールはかなり怖い病気です。

 

健診でコレステロールを指摘され、家族に心臓病の方がいたら、まずはこの病気を疑うことが大切です。

(もちろん脂質異常症の原因となる、甲状腺機能などをチェックは必須)

 

若年性心臓死の原因のひとつです。コレステロールは全く油断できません。

 

気をつけましょう。

 

【うつ病】について学び直す

精神疾患は多岐に渡りますが、統合失調症うつ病、不安症、不眠症強迫症など症状からある程度分類されています。

 

内科の病気はある程度理論が確立した分野であるため、知識を持つのは比較的容易ですが、精神疾患はその点非常に捉えどころが難しいと感じてしまいます。

 

うつ病は、気分・感情の障害で、気分が落ち込む、悲観的気分になる、気力低下、疲れやすい、などの変化を伴って、社会生活に支障をきたした状態です。

 

睡眠障害、思考力低下、死にたい気持ちになる、などの症状も出ます。

 

うつ病の典型例は、こんなかんじになります。

40歳、会社員。職場の異動に伴い管理職となった。

ほかの部署と売上を競うような立場になり、多忙かつ不眠傾向となった。

徐々に食欲も低下し、絶望的な考えが浮かぶようになり、趣味の時間もたのしく感じられないようになった。

 

うつ病に対する治療薬は、脳内のセロトニンノルアドレナリンドパミンといった物質が分解されるのを 防ぐことで、セロトニンノルアドレナリンドパミンの濃度をあげることにより、効果を発揮するとされています。

 

有名なパキシルという薬(一般名パロキセチン)は、脳内のセロトニンを増加させることによって、抗うつ効果をあらわします。

 

ところで、うつ病の初期の段階で出てくる症状とは、気分の落ち込みではなく、睡眠障害と言われています。

 

まずはじめに、眠れない、または、眠りすぎてしまう睡眠過多になります。

 

睡眠障害が出た時点で、もしかしたら誰もがうつ病の前状態になっている可能性があるということになります。

 

また、脳内のセロトニンノルアドレナリンドパミンを増やせば単純にうつ病が良くなるわけではなく、これかの物質が互いに相互作用を起こしているのではないかと言われています。

 

そして、これらの脳内のさまざまな物質を増加させることができるのは、抗うつ薬だけではなく、実は運動にも同様の効果があることが示されているのです。

 

以前、精神疾患には睡眠が必要であるという精神科専門医の先生の意見をご紹介した際に、睡眠には適度な身体疲労が大切で、身体疲労を得るには運動習慣が必要だと説明しました。

 

運動習慣→身体疲労→適切な睡眠→精神疾患の予防・改善

 

という仮説を立てましたが、 運動習慣そのものが、単独で脳内のセロトニンノルアドレナリンドパミンを増加させ、互いの相互作用を促し、うつ病の治療になるというデータがあるのです。

 

運動は適切に行えば、副作用がありません。

 

もし、運動に抗うつ薬と同じ、またはそれ以上の効果があるとしたら、どちらを選ぶでしょうか。

抗うつ薬には吐き気、性欲減退、離脱が難しくなるなどの多彩な副作用があります)

 

もちろん、うつ病は病状が上下しますから、あまり安定していない時に運動は無理でしょうけれど、周囲が支援するなどの何らかの支援をして、運動習慣をつけるということが、最も良い治療になりうるのかもしれません。

 

将来、仮にうつ病治療の第一選択の治療が【運動】になると、また違った精神疾患治療の世界が広がるのではないかと思います。

 

もともと長い歴史の中では、人類にはうつ病という概念もきっとなく、抗うつ薬という武器もなかった訳ですから。

【下痢症】とは何なのか

外来で風邪と同様に多い症状として、下痢があげられます。

 

急性下痢症とは、

 

急性発症で(発症から14日以内)、軟便、水様便が普段よりも一日3回以上増加しているもの

 

と定義されています。

 

 原因は90%が感染が原因で、その多くはウイルスとされています。

その他の原因としては、薬剤性、中毒性、虚血性と続きます。

ウイルスの代表格は、冬季に流行するロタウイルスノロウイルスです。

(最近ロタウイルスに対する予防接種が開始となり、罹患者は減少傾向だそうです)

 

細菌でマークすべきは、サルモネラ菌カンピロバクター腸炎ビブリオ腸管出血性大腸菌です。

 

また、海外渡航歴があれば赤痢菌、コレラ菌も考慮に入れます。

 

抗菌薬を直近で内服していれば、偽膜性腸炎という病気も考慮する必要があるでしょう。(原因はクロストリジウム・ディフィシルという病原体です)

 

チフス、パラチフスという病原体もありますが、下痢をともなわないことも多いそうです。

 

 

急性下痢症の診断方法を以下にまとめていきます。

 

まず重要な情報としては、

 

発症時期がいつか

発熱・血便・腹痛はあるか

食事内容

海外渡航

抗菌薬内服歴があるか

免疫不全はあるか

同じような症状のひとが周りにいるかどうか

 

また、嘔吐が強い場合には、ウイルス性、もしくは中毒性の可能性があるそうです。

 

集団発生の場合には、食中毒では2~7時間経過していることが多く、ウイルス感染では潜伏期間は14時間以上程度と考えます。

 

吐き気や嘔吐といった症状は、急性心筋梗塞、頭蓋内病変、敗血症などでも多くみられるため、常にそれらを念頭には置いておくべきでしょう。

 

下痢も重症度を判定することが大切で、血性下痢で38度以上の発熱がある場合、水様下痢のために日常活動が制限される場合で、特に海外渡航歴が一週間以内にある場合は、細菌性下痢も想定します。

(腸チフスサルモネラ腸管出血性大腸菌カンピロバクターアメーバ赤痢など)

 

 a)ウイルス性下痢症

ノロウイルスロタウイルスが代表格です。

 

ノロウイルスによる下痢症は、ノロウイルスに汚染された加熱不十分な二枚貝を食べることによって発症することが有名ですが、ヒトからヒトにへの感染もあります。

潜伏期間は短く、半日~2日です。急な吐き気や嘔吐から始まることが多く、その後に水様下痢が来るという臨床像です。下痢は2-3日で改善することが多く、発熱は伴わないことも多いため、発熱が有ったり下痢が改善しなければ、他の疾患を考慮するとされています。

ノロウイルスに関しては、便の迅速検査が保険適応となったようですが、検査が陰性となってもノロウイルスを完全に否定できる検査ではないことから、あまり推奨されていません。

 

 

b)細菌性下痢症

 

ウイルス性下痢と比べて症状が強いのが特徴です。

38度以上の発熱、血便、腹痛を伴うことが多いとされているが、症状から断定はできないので、疑わしいものを食べたのかどうかという情報が重要になります。

 

まず、 魚介類といえば、腸炎ビブリオです。

カレーやシチューではウェルシュ菌

卵・牛レバー刺や鶏肉でサルモネラ菌

生の鶏肉といえば、やはりカンピロバクターが有名

(ギランバレー症候群の原因にもなります)

生の牛肉では腸管出血性大腸菌

・・・

など、結構あげたらきりがありませんので、今回は以下省略します。

 

 

成人の細菌感染は自然に軽快するものが多いため、患者さん全員に検査を行い、下痢症の原因微生物を特定することはあまり意味はない、とまとめられています。

 

しかし、症状が長引いている場合や重症感がある場合(バイタルサイン)には、便培養を躊躇しない方がよさそうです。

 

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治療については大原則が次の一文です。

 

急性下痢症に対しては、まずは水分摂取を励行した上で、基本的には対症療法のみ行う

 

バイタルサイン(血圧、心拍数、体温などです)、起立性低血圧の有無から脱水の程度を評価し、補液が必要であれば行うが、可能な限り経口摂取を行うことが勧められています。

 

しかし、以下の場合には抗菌薬投与が必要とされています。

 

1、菌血症が疑われる場合

2、重度の下痢による脱水・ショックで、入院加療が必要なレベルである

3、免疫不全がある場合

4、合併症のリスクが高い場合(50歳以上、人工血管、人工関節、人工弁、ペースメーカなどが入っている場合)

5、海外渡航後の下痢症

 

 

※便培養でサルモネラ菌カンピロバクターと診断された場合にはどうするかも記載がありましたので、以下に簡単にまとめます。

 

サルモネラ菌

健常者における軽症のサルモネラ腸炎については、抗菌薬を投与しないことを推奨

必要な場合には、レボフロキサシンを3~7日、もしくはセフトリアキソン点滴を3~7日、アジスロマイシンを3~7日。

 

カンピロバクター

健常者における軽症のカンピロバクター腸炎については、抗菌薬を投与しないことを推奨

仮に重症な場合には、クラリスロマイシン(200)を一日2回、3~5日。

 

 

長くなってしまいましたが、今回の資料を確認しての感想は、

 

急性下痢症のほとんどは、原因が何であれ、検査や抗菌薬は不要で、対症療法のみで水分をとりながら経過観察するしかないということでしょうか。

 

 

重症かどうかの判断がひとつ分岐点になりそうです。