クリニックという医療の最前線で日々過ごしている立場から、未来のクリニックはこうなる、という予測をしてみたいと思います。
今回の内容は科学的根拠に基づく内容ではありませんので、様々な予想があって当たり前で、みなさまの予想も聞かせて頂けますと大変勉強になります。
未来のクリニックはこうあるべき、という自分なりの思いも少し書いていきます。
昔はひとりの医師がなんでも診るというのが常識で、例えば内科医が内科以外に小児科も診る、整形外科医が内科を診る、心臓外科医が内科でクリニックを開業する、などが当たり前でした。
内科には大きく分けて、呼吸器内科、循環器内科、消化器内科、腎臓内科、血液内科、内分泌内科、膠原病内科、脳神経内科といったように細かく分かれています。
呼吸器内科は肺炎、肺がんなど
循環器内科は高血圧、コレステロール異常、心筋梗塞、狭心症、心不全、心房細動など
消化器内科は肝臓、胆嚢、すい臓、胃腸、内視鏡検査など
腎臓内科はその名の通り腎臓病(糖尿病性が多いでしょうか)
血液内科は貧血や白血病、リンパ腫などの血液疾患
内分泌内科は甲状腺疾患、糖尿病など
膠原病内科はリウマチなどの膠原病
脳神経内科は脳卒中(脳梗塞、脳出血など)神経変性疾患と呼ばれるもの
といったように、これだけ見てもかなり細かく分かれます。
これに外科系もみていきます。
呼吸器外科、心臓血管外科、消化器外科(胃腸系と肝臓系に分かれる)、脳神経外科、整形外科、乳腺外科、皮膚科、眼科、耳鼻咽喉科などです。
外科系は基本オペが仕事です。
流れを単純化すれば、内科が診断をつけて外科に紹介し、外科が手術するという仕組みです(例外は整形外科、眼科、耳鼻科)。
整形外科、眼科、耳鼻咽喉科にはそれぞれに対応する内科はないので、内科からの紹介というケースは少ないかも知れません。
(整形外科に対する内科的な立場にあるのは歴史的に整骨院なのかもしれません)
最近は内科医が手術できる領域が増加し、カテーテル、内視鏡などで手術をする治療が増加し、これがまた医療状況を変えています。
最近の医者は臓器ばかりをみて、患者全体を診ていない
という批判をする年配の方もおりますが、これは医療の進歩から考えると仕方がないことです。
昔は、現在ある多くの病気が病気として認識されていなかったので、まず病気の数が昔と全然違います。
また、治療法も格段に進歩しており、その治療技術を身に受けるまでにそれなりの時間がかかるようになりました。
循環器内科を例に出しますが、30年前には心筋梗塞にはカテーテル治療がありませんでした。
急性心筋梗塞の患者さんが搬送されてきても、血栓を溶かす薬を注射して、助かるのをただ祈るしかなかったそうです。
今では考えられないことです。
当然救命率も現在よりはるかに低いものでした。
現在ではカテーテル治療が当たり前になり、救命率も格段に上昇しましたが、昔の医師を比べても単純に、このカテーテル技術を磨く時間が増えているのです。
昔も今も、医師に与えられた時間は一日24時間であることには変わりがないので、
どの分野も診れますよという立場で診療していては、最終的にはどの分野も中途半端な知識と経験しかない
ことになってしまいます。
最近、なんでも診ることがカッコイイという価値観が世の中や若い医師の世代に回帰しているようですが、その立場で進んでいった医師の先はどうなるのでしょうか。
なかなか厳しいと思います。
循環器専門医である自分ですら、循環器分野を全て100%網羅することができるはずもない時代です。
何でも診れますよ、とような顔をするのは時代錯誤かなと思いますが、
そこに「なんでも診れるなんてすごい!」と思い込む需要があれば成立する訳で、
それで進んでいくと、無駄な検査をたくさんされたり患者さんだけが損をする、しかし、それがわからない患者さんはそれを求めてしまうといった、なんとも不思議な世界になってしまいそうです。
そのあたりを明らかにする情報提供をしなければならないと思います。
なんでも分かる訳ないんです。
これも総合診療科はすごいという編集をしている一部のテレビ番組による悪影響でしょう。
ただし、患者さんが次にどこにいった方がいいのかを交通整理をする医師、クリニックは今後必要だとは思います。
未来のクリニックは、例えば高血圧クリニック、糖尿病クリニックというようにより細分化され、そこに紹介する交通整理クリニックに分かれると思います。
また、詳細に分析してみたいと思います。