予防医療のランダム・ウォーカー

内科専門医のblog 〜予防に勝る治療なし〜

心房細動はハイリスク疾患です

健康診断の心電図で、心房細動と診断されてそのまま様子をみている方はどれくらいいらっしゃるのでしょうか。

 

 

心房細動は無症状でも、脳梗塞心不全を高率に起こします。

また、認知症の原因になると言われています。

 

 

特に脳梗塞は一度発症してしまうとなかなか元には戻りませんので、心房細動を絶対に放置しないでください。

 

 

自分が学生の頃は、心房細動は死ぬ病気ではないからアスピリンだけでOKと指導している先生も現実にいました。心房細動はほっといていいから、という雰囲気があったと思います。

 

 

そう考えると隔世の感を感じざるを得ません。

 

 

可能なら、循環器専門医のいるクリニック、さらに欲を言えば、不整脈専門医のいるクリニックを受診してください。

 

 

今はリスクを計算して、抗凝固薬を飲みながら、心房細動を根治できないかを相談すべき時代です。

 

 

心房細動は重要なので、これからも何度も話題にしていきたいと思います。

厚生労働省(国)が推奨するものにはそれなりの意味がある

以前、がん検診について、現状どういったものが、国が指定するがん検診なのかについて、確認しました。

 

このことは、がん検診だけではなく、一般的な健康診断にも当てはまるのではないか、と考えています。

 

何を言いたいのかというと、国がある程度の税金を投入して行う検査や健康診断の項目には、ある程度の科学的根拠がある、ということです。思いつきで決めた検査ではありません。

 

常識的に考えても、国には科学的に根拠がないものに税金を投入していた、となると公的機関としては非常にまずいので、なんらかの理由が必要なのです。

 

健康診断で高血圧、コレステロールの異常、糖尿病などをチェックするのも同様です。

 

これらを早めに対策することで、脳卒中心筋梗塞、透析につながる糖尿病性腎症を予防することが可能というデータがあるので、国は公費(税金)を入れている、ということです。

 

逆に、効果に疑問が残る検査や、利益よりも不利益が大きい検査を国は推奨することはありません(できません)。

 

現状、がん検診では、胃がん検診、大腸がん検診、肺がん検診、乳がん検診、子宮頸がん検診の5つとされているのは、他のがんでは、予防に対して明らかな有効性が証明されている検査がないからです。

 

標準治療と代替治療もよく話題になりますが、これも近いところがあります。標準的な治療には、バックグラウンドに膨大な科学的データがあります。先人が残してくれたデータを利用させていただいて、現在の健康に活かすためにあるもの、と考えています。

5つのがん検診は是非受けましょう。

【がん・脳卒中・心筋梗塞】の時代は終わった

最近、医療保険の宣伝などで、【がん・脳卒中心筋梗塞】という三大疾病という表現が少なくなったような気がするのは自分だけではないでしょう。

 

少し前までは、この三大疾病という表現をたくさん耳にしましたし、保険もそれを売りにしていました。

 

現在のkey word、key sentenceは、

人生100年時代】と【日本人の2人に1人はがんになる時代】です。

 

脳卒中心筋梗塞の発症は、スタチンという薬剤が使用可能になってから、世界で約半数に激減したと言われています。

 

脳梗塞や心臓病は予防ができる時代になってきています。

 

がん、脳卒中心筋梗塞は重要な疾患とされてきましたが、これからはこのコレステロールのコントロール、高血圧の改善、また、糖尿病があればその改善を徹底的に行う事で、少なくとも、脳卒中心筋梗塞は激減するはずです。

 

スタチンは日本人が開発に関わっています。日本発の凄い薬です。

 

脳卒中心筋梗塞がなくなれば、あとはがんだけになります。

 

生活習慣病とはあまり関係がないようにも思えるがんですが、発症に免疫が関与しているようなら、糖尿病とも無関係ではないでしょう。食習慣や食の衛生状態、また肥満も関係してるでしょう。

ひとつの降圧薬で十分血圧が下がる程、現実は甘くない

血圧が下がりすぎるのが怖いからか、降圧薬をひとつ処方して、目標血圧に達していないのに、それで様子をみましょうとしている医師が多すぎる気がします。

薬は出してるんだから、あとは自己努力不足。塩分守ってますか、運動して少しは減量したら、といった感じで、血圧が下がらないのはあなたが悪いと言われてるかたもいらっしゃると思います。

血圧を下げる薬にはたくさんの種類があります。

血管を広げて血圧を下げる薬、血液の量を減らして血圧を下げる薬、心臓からの血液を出すスピードの立ち上がりを軽くして血圧を下げる薬、血管拡張とともに、臓器保護作用を持つ薬など、さまざまです。

血圧を単純に下げるだけなら、こんなに種類いらなそうですが、どの薬にも一長一短あり、それぞれの長所を活かしながら、副作用を消すようなかたちで組み合わせて使えるかどうか、が経験と知識によるのかなと思います。

実感としては、単剤では本物の高血圧には全く太刀打ちできません。

副作用を出したくない、下げすぎたくないあまりに、しっかり血圧を下げる治療をしていないことが多すぎます。治療するならちゃんと下げないと意味ありません。

高血圧ガイドラインがよりしっかりした降圧をもとめてきている以上、高血圧は一般内科医が治療できるレベルではなくなったのかな、というのが実感です。

自分の専門領域以外も広くみる、というスタイルが時代に合わなくなってきています。

将来的には高血圧も人工知能が考えた処方内容を選択することになるのかもしれませんが、投薬された側は機械ではなく人間(生体)なので、結局はヒトの手で微調整が入ることになると思います。

いまの状況をみると、不十分な降圧で経過観察になっている方が非常に多いので、将来、医師が血圧を下げることに対して人工知能からの指示を受けた場合、人工知能からいちどに降圧薬をたくさん指示されて、びっくりしてしまう医師が続出するのではないでしょうか。

それくらい、薬は足りてないです。運動療法の指導も不十分だし、減塩も現実的にはまだまだでしょう。特に若い世代では減塩は大きな壁かもしれません。

高血圧の運動療法

結局、高血圧も運動療法が有効と科学的根拠が証明されています。

 

継続的に運動療法を行うと、高血圧の方の場合、収縮期血圧(上の血圧)が8~10近く、拡張期血圧(下の血圧)が5程度低下させることができます。

 

運動療法が血管の質を変えたり、血管の壁から血管を拡張させる作用のある物質をつくるため、血圧が低下するとされています。

 

運動は、ウォーキングやぺダリング(自転車)、水中歩行、軽いジョギング、レクレーションなどの有酸素運動です。

 

筋力トレーニング(レジスタンストレーニング)ではないことに気を付けましょう。

 

一日30分が条件ですが、30分まとまった時間を取れなければ、10分間を一日のうち3回でもいいです。

 

ただし、運動を継続するには注意点がいくつか示されています。

 

まず、運動前にストレッチなどの準備をしっかりやることと、メディカルチェックを受けて、虚血性心疾患(狭心症)や心不全の傾向がないかを確認することとされています。

 

メディカルチェックとは、健康診断のようなものから、通常の診察まであると思いますが、高血圧のみで狭心症心筋梗塞などの虚血性心疾患のリスクになりますから、例えば、他に、糖尿病、コレステロール異常、喫煙、家族に狭心症心筋梗塞の方がいる、などに当てはまる方は、運動を勝手にしないで、メディカルチェックを受けるべきかと思います。

 

この注意点があるため、以前記載しましたが、高血圧の方がジムに行って高負荷の筋トレをやっていたりすることに疑問を持っています。

 

また、全員が同じメニューの運動負荷を行うような施設も疑問があります。

 

せっかく健康のためにジムに行ったのに、実は狭心症心筋梗塞の予備段階で、ジムの運動中、または自宅に帰ってから具合が悪くなった、倒れた、とか結構ありうると思います。

 

どのくらいの運動量がその人に適切かといった、いわゆる運動処方はデリケートなのです。

 

個人的な意見としては、運動処方は病気の知識がない医師以外できないし、してはいけないんじゃないかな、と考えています。

 

高血圧も糖尿病も、コレステロールもなにもない若い方(20から40代)までなら、運動処方は医師でなくてもいいのかな、と思う程度です。

 

細かいという指摘もあるかもしれませんが、自分なら専門家に運動処方を受けて、安全に運動したいですね。曖昧にしてやるのは良くないと思いますよ。

高齢者は高血圧なのが当たり前か

高齢者は高血圧なのは当たり前だから、そんなに下げなくてもいいんじゃないのと、ごく稀に聞かれることがあります。

 

これはたぶん多少バイアスがかかっていて、高齢者の方でも血圧が高くない方もいらっしゃいます。

 

病院にきている方は血圧が高い方が多いですから、みんな血圧が高いように錯覚する面があるのかもしれません。

 

血圧の低い方はそもそも病院に来院する率が低いだろうからです。

(血圧が低い方々はそもそも心臓病・脳卒中になる率が低いことも影響しているのでしょう)

 

今回、高血圧のガイドラインでは、より厳格な血圧コントロールに踏み込むように指導されています。

 

これは海外で行われたスプリント試験という研究の結果を受けての変化だと思われます。

 

スプリント試験では簡単にいうと、収縮期血圧(上の血圧)を120未満にしたグループと140未満までにしたグループを決めて、5年間追跡して病気の発症をみたところ、血圧を120未満にしたグループでは、140未満にコントロールしたグループと比べて、明らかに心筋梗塞脳卒中心不全、死亡率などの発症率が低下した、という結果でした。

 

本来は5年間で調査を行う予定だったものが、途中で明らかな差となってしまったため、倫理上の配慮で途中で中止となりました。

 

これをそのまま日本人に当てはめて良いのか、という議論もあるようですが、血圧は特に慢性腎臓病、心臓疾患、糖尿病の方を中心に厳格に下げるようになっています。

 

 

このいう話になると、決まって薬のメーカーが薬をたくさん薬を売りたいからだ、とかいう意見が出てきますが、もともと若い頃はほとんどの人が血圧が高くはない訳ですから、やはり120前後まで降圧するのは妥当な気はします。

 

そもそもガイドライン作成委員の先生方が、そういうメーカーを忖度して、血圧をより低くせよ、と言うほどモラルは低くありません。

 

ただ若い頃の血圧に戻そうよ、という、それだけの発想なのだというのが私見です。

 

せめて140/90未満は達成させましょう。

 

血圧を下げるための方法については後日、また考えてみたいと思います。

 

減塩、運動、降圧薬が結局は柱になる治療です。

 

なるべく薬を飲みたくないというご意見には全く同意します。

 

ただ、血圧が高いと様々な合併症の発症率が確実に上昇するのは明らかなので、どんな方法でもいいので、血圧の目標値を達成させることが重要なんだと思います。

 

まずは薬飲みながら血圧を下げつつ、生活習慣を改めていき、血圧が下がったところで降圧薬を中止する、というような戦略もありだと思っています。

 

 

【高血圧パンデミック】との戦い

毎週毎週、本当に毎週、新規の高血圧の方にお会いします。

特に症状はないんですが、数字にびっくりしてという方がほとんどです。

血圧は客観的に数値ででるので、非常に治療がやりやすい生活習慣病のひとつですが、症状がないため治療に対するモチベーションの維持が難しいと思います。

血圧を適正値まで下げることで、脳卒中、心臓病(特に狭心症心筋梗塞)、その他の動脈硬化による疾患の発症を【確実に】減らすことができます。

これも曖昧な話ではなく、科学的に証明されています。

なかには、他の病気によって高血圧になっている場合もありますから、若年層でも必ず内科(できれば循環器内科)を受診してください。

循環器内科(心臓内科)がよいと思う理由は、以前も書きましたが、高血圧の先には心臓病や血管病(脚の血管が狭くなる、首の血管が狭くなる、大動脈疾患など)といった循環器内科が専門にしている病気ばかりだからです。

自分の患者さんが心筋梗塞になってほしい、なんて思う医師はまずいませんから、心筋梗塞の大変さ、脳卒中の大変さをよく知っている医師を選ぶと、血圧もかなりしっかりみていただけるかと思います。

血圧が150/90で、まあまあだから、様子をみましょうでは困るのです。

高血圧のガイドラインという、いくつまで下げれば合併症が減らせるか、を計算し尽くした決まりのようなものが最近改訂されています。

ガイドラインを作成された先生方は、自分たちの本気度を感じてほしいとコメントされていました。

商品名を出すのは避けますが、降圧効果が低い薬だけを飲んで、血圧高いけど一個飲んでるから下がらなくても仕方ないでしょ?という非常識を壊していければよいと思います。

高血圧ガイドライン2019については、内容をよく確認してまた詳しく情報提供します。若い頃はみんな100/60くらいだったはずです。実際若い方の血圧はほとんどがそうです。コレステロールもそうですが、血圧も最近the lower, the betterな傾向になってきています。(もちろん下げすぎはだめですが)