予防医療のランダム・ウォーカー

内科専門医のblog 〜予防に勝る治療なし〜

ひとつの降圧薬で十分血圧が下がる程、現実は甘くない

血圧が下がりすぎるのが怖いからか、降圧薬をひとつ処方して、目標血圧に達していないのに、それで様子をみましょうとしている医師が多すぎる気がします。

薬は出してるんだから、あとは自己努力不足。塩分守ってますか、運動して少しは減量したら、といった感じで、血圧が下がらないのはあなたが悪いと言われてるかたもいらっしゃると思います。

血圧を下げる薬にはたくさんの種類があります。

血管を広げて血圧を下げる薬、血液の量を減らして血圧を下げる薬、心臓からの血液を出すスピードの立ち上がりを軽くして血圧を下げる薬、血管拡張とともに、臓器保護作用を持つ薬など、さまざまです。

血圧を単純に下げるだけなら、こんなに種類いらなそうですが、どの薬にも一長一短あり、それぞれの長所を活かしながら、副作用を消すようなかたちで組み合わせて使えるかどうか、が経験と知識によるのかなと思います。

実感としては、単剤では本物の高血圧には全く太刀打ちできません。

副作用を出したくない、下げすぎたくないあまりに、しっかり血圧を下げる治療をしていないことが多すぎます。治療するならちゃんと下げないと意味ありません。

高血圧ガイドラインがよりしっかりした降圧をもとめてきている以上、高血圧は一般内科医が治療できるレベルではなくなったのかな、というのが実感です。

自分の専門領域以外も広くみる、というスタイルが時代に合わなくなってきています。

将来的には高血圧も人工知能が考えた処方内容を選択することになるのかもしれませんが、投薬された側は機械ではなく人間(生体)なので、結局はヒトの手で微調整が入ることになると思います。

いまの状況をみると、不十分な降圧で経過観察になっている方が非常に多いので、将来、医師が血圧を下げることに対して人工知能からの指示を受けた場合、人工知能からいちどに降圧薬をたくさん指示されて、びっくりしてしまう医師が続出するのではないでしょうか。

それくらい、薬は足りてないです。運動療法の指導も不十分だし、減塩も現実的にはまだまだでしょう。特に若い世代では減塩は大きな壁かもしれません。