高齢者は高血圧なのは当たり前だから、そんなに下げなくてもいいんじゃないのと、ごく稀に聞かれることがあります。
これはたぶん多少バイアスがかかっていて、高齢者の方でも血圧が高くない方もいらっしゃいます。
病院にきている方は血圧が高い方が多いですから、みんな血圧が高いように錯覚する面があるのかもしれません。
血圧の低い方はそもそも病院に来院する率が低いだろうからです。
(血圧が低い方々はそもそも心臓病・脳卒中になる率が低いことも影響しているのでしょう)
今回、高血圧のガイドラインでは、より厳格な血圧コントロールに踏み込むように指導されています。
これは海外で行われたスプリント試験という研究の結果を受けての変化だと思われます。
スプリント試験では簡単にいうと、収縮期血圧(上の血圧)を120未満にしたグループと140未満までにしたグループを決めて、5年間追跡して病気の発症をみたところ、血圧を120未満にしたグループでは、140未満にコントロールしたグループと比べて、明らかに心筋梗塞、脳卒中、心不全、死亡率などの発症率が低下した、という結果でした。
本来は5年間で調査を行う予定だったものが、途中で明らかな差となってしまったため、倫理上の配慮で途中で中止となりました。
これをそのまま日本人に当てはめて良いのか、という議論もあるようですが、血圧は特に慢性腎臓病、心臓疾患、糖尿病の方を中心に厳格に下げるようになっています。
このいう話になると、決まって薬のメーカーが薬をたくさん薬を売りたいからだ、とかいう意見が出てきますが、もともと若い頃はほとんどの人が血圧が高くはない訳ですから、やはり120前後まで降圧するのは妥当な気はします。
そもそもガイドライン作成委員の先生方が、そういうメーカーを忖度して、血圧をより低くせよ、と言うほどモラルは低くありません。
ただ若い頃の血圧に戻そうよ、という、それだけの発想なのだというのが私見です。
せめて140/90未満は達成させましょう。
血圧を下げるための方法については後日、また考えてみたいと思います。
減塩、運動、降圧薬が結局は柱になる治療です。
なるべく薬を飲みたくないというご意見には全く同意します。
ただ、血圧が高いと様々な合併症の発症率が確実に上昇するのは明らかなので、どんな方法でもいいので、血圧の目標値を達成させることが重要なんだと思います。
まずは薬飲みながら血圧を下げつつ、生活習慣を改めていき、血圧が下がったところで降圧薬を中止する、というような戦略もありだと思っています。