予防医療のランダム・ウォーカー

内科専門医のblog 〜予防に勝る治療なし〜

医療は予防の時代に

 

日本の医療は、ある面では世界でも非常に高い水準にあります。

この高水準の医療によって、日本人の「平均寿命」は延びてきているものの、医療・介護に依存する必要がない「健康寿命」との差が大きくなっています。

言い換えると、自由に動けないからだになってしまったり、医療・介護に高度に依存した状態で生きていかなければならなくなった方が増加している、ということになります。

この平均寿命と健康寿命の差は、男性で9歳分、女性では12歳分もあり、その最大の原因は脳卒中と循環器病とされています。

 

脳卒中と循環器病は、高血圧、糖尿病、脂質異常症(高脂血症)、肥満などをベースとすることが多く、早い段階でこれらを改善できれば、発症を予防できる場合もあります。 しかし、今までの日本の医療では、例えば急性心筋梗塞を発症した患者さんに昼夜を問わず、緊急治療を行うことに最大限の労力を裂き、予防にまでなかなか手が回らなかった、という感じだと思います。

何か事が起これば、それにすぐ対応する、という面では非常に高い水準にある日本の医療ですが、「病気になることを防ぐ」という面ではまだまだ、というのが、個人的な意見です。

 

急性心筋梗塞で緊急治療となった方の中には、健康診断で高血圧を言われていたが放置していた、糖尿病を甘く見ていた、そんな方ばかりです。

 

いま、少子高齢化によって労働人口が急激に減少しています。

定年という概念が徐々に変化し、高齢になっても働ける環境がさまざまな分野で整いつつあります。

高齢になっても元気で働けるからだを維持することは、医療の重要な仕事のひとつですが、それ以上に、今の若い世代がこれからも元気で働けることも、とても大切なことです。

 

健康寿命を伸ばすという点で、今後日本では、今までと違ったレベルで、予防医療が重視されるように変わると思います。

 

健康診断で、高血圧だった、コレステロールが高かった、軽い糖尿病と診断された。

しばらく食事療法と運動で様子をみましょうと言われたが、結局具体的にどうすればいいかはっきりしないまま、次の年の健康診断を受けて、また同じ結果だった。

数年後、脳梗塞を発症した、心筋梗塞を発症した、、、

 

もちろん防ぎようのないケースもたくさんあるとは思います。健康診断では問題なかったのに・・というケースもあります。

しかし、早めに介入できていたら・・と考えさせられるケースも多くあることは事実です。

 

こういうところをいろいろと考えていければいいなあと思います。