予防医療のランダム・ウォーカー

内科専門医のblog 〜予防に勝る治療なし〜

血圧手帳がなくなる日

自分の担当している外来は高血圧、コレステロール異常、不整脈、慢性心不全、虚血性心疾患の順に患者さんが多く、 特に、他の内科外来で血圧のコントロールがつかない方を担当させていただくケースが多いです。 一応循環器内科としていますが、外来ではその…

運動は高齢者にほど勧めたい

運動は高齢者ほど有効だと思います。 入院中の心臓病の高齢者の方には、ベッドサイドでの簡単な筋トレから開始することが多いです。 簡単な踵上げ、ゴムバンドやチューブをベッドの柵に結んで、手足で引っ張るようなトレーニングなどが代表的です。 ストレッ…

運動は暖かくなってから始めます問題を考える

運動療法は、さまざまなメリットがあり、副作用がないことが最大のウリです。 たくさんのメリットがあって、場合によっては内服薬を減らす効果もある運動をなかなか続けられないのは、どうも以下の理由があるようです。 理由1、季節に四季がある。 理由2、単…

毎日の運動療法をupdateしていく

今までに何度も、予防医療に対する運動の役割、重要性を書かせていただきました。 運動の良さは副作用がなく、薬などと同等もしくはそれ以上の効果が得られることにあります。 心肺機能が高まることはもちろん、認知症予防、うつ病の予防と治療、大腸がん予…

なんでも診れる医師はもう存在しえない

クリニックという医療の最前線で日々過ごしている立場から、未来のクリニックはこうなる、という予測をしてみたいと思います。 今回の内容は科学的根拠に基づく内容ではありませんので、様々な予想があって当たり前で、みなさまの予想も聞かせて頂けますと大…

心臓弁膜症を注意喚起するCMが最近やたらと多い理由

心臓弁膜症かも?というテレビCMが、この数年流されるようになったのをご存知でしょうか。 いままで誰も言い出さなかったことを急に言うようになったのか、その理由を一部の医師はおそらく気がついています。 いま、心臓病の世界では、世の流れとして、大き…

死に直結する家族性高コレステロール血症は、まず存在を認識することから

若いうちに心筋梗塞を起こす、家族性高コレステロール血症を今回ご紹介します。 その名の通り、遺伝性の病気です。 LDLコレステロールが高い、アキレス腱肥厚(アキレス腱が太い)、家族の中で55歳以下で心筋梗塞を発症した家族がいる、の条件があれば診断さ…

【うつ病】について学び直す

精神疾患は多岐に渡りますが、統合失調症、うつ病、不安症、不眠症、強迫症など症状からある程度分類されています。 内科の病気はある程度理論が確立した分野であるため、知識を持つのは比較的容易ですが、精神疾患はその点非常に捉えどころが難しいと感じて…

【下痢症】とは何なのか

外来で風邪と同様に多い症状として、下痢があげられます。 急性下痢症とは、 急性発症で(発症から14日以内)、軟便、水様便が普段よりも一日3回以上増加しているもの と定義されています。 原因は90%が感染が原因で、その多くはウイルスとされています。 …

【風邪】とは何なのか

抗菌薬に対する耐性をもった菌が増加し、その菌が原因での死亡者数が8000名という報道が最近されていました。 日本では抗菌薬を風邪にでも何にでもすぐ使用しすぎるから、耐性菌の問題が起こっているという趣旨の内容でした。 こういう話の結語は決まってい…

予防接種を学びなおす

若干の変化ながら、徐々に変わっていく予防接種。 小児科専門医や感染症専門医ならまだしも、基本的に内科医は予防接種のアップデートが後手に回りがちです。 その反省から、今回あたまの中を整理する目的で予防接種についてまとめてみました。 まず、ワクチ…

市販類似薬が保険対象外は正しいのか

現在の医療の進歩は、医療関係者であってもついていくのが難しい状況です。 その原因は、 1、以前よりも病気の数が増加したし、これからも増え続けること。 新しく発見された病気はそれほどないかもしれませんが、20年前と比較して一つ一つの病気が細かく分…

大学病院の役割を明らかにします

普段は、某大学病院の内分泌内科に通院している方と、偶然お話する機会がありました。初対面のかたでした。 内分泌外来とは、甲状腺疾患、糖尿病などをメインにしている診療科です。 その患者さんがいうには、 内分泌内科の担当医に「最近物忘れがひどいので…

【血圧の下げ過ぎ】とはどのレベルをいうのか

こんなに血圧が下がってますけど、大丈夫でしょうか? このようなご質問をいただくケースも非常に多いので、自分の確認作業の意味も含めてまとめてみたいと思います。 まず、血圧の下げすぎを検証することを目的とした、(前向き)な研究はありません。 なの…

低血圧の基準とは

低血圧という概念は、一般的に収縮期血圧(上の血圧)が100 mmHg以下の場合と定義されています。 しかしながら、100を切っていてもほとんどの場合、無症状で問題とならないことが多いようです。 なかには、神経の病気や糖尿病による神経調節障害が背景にある…

血圧測定の方法は決まっているが・・

家庭血圧の測定方法は、高血圧治療ガイドライン2019で一応決まっていますので、簡素化してまとめておきます。 まず、上腕で測定します。 上腕とは肘より上の腕の部分です。手首で測定する血圧計は推奨されていません。 血圧の数値にはばらつきがあるため、一…

心臓病発症予測AIをTOSHIBAが開発

予防医療にビッグデータを利用した大きな波が来つつあるのは間違いありませんし、もはや避けられません。 今日もまた、あたらしい話題を目にしました。 心臓病の発症予測を、過去のビッグデータを基にして3年以内に実用化できるレベルになるという話題です。…

白衣高血圧は様子をみて良いのか

白衣高血圧とは、診察室では高血圧となるが、診察室以外の自宅等では正常な血圧を示す場合をいいます。 これまで、白衣高血圧はそれほど問題はない、とされてきました。 実際にいまでも、多くの先生が自宅での血圧が問題ないなら病院で160でも大丈夫ですよー…

AIが脳梗塞の原因を検知可能に?

脳梗塞の原因として対処することが可能な、心房細動についてのあたらしいTOPICです。 また、心房細動か・・と思われたかたもいらっしゃるかと思いますが、 心房細動は突然、誰にでも起こりうる病気で、かつ合併症の重症度が高いので、今後も何度もまとめてい…

知識がないと惜しみなく奪われる

どの業界にもあることではあるとは思うのですが、 【知識がないと惜しみなく奪われる】のは世の常です。 少し前に話題に挙がっていた【血液クレンジング】という医療行為について、さまざまな報道をみて、あたまに浮かんだのがこのフレーズでした。 日本では…

Apple Watch は脳梗塞予防の切り札となれるか

Apple Watchの心電図機能を使用した40万人を超えるビックデータについて、いまさら感はありますが、ご紹介します。 Apple Heart Studyと名前のついた研究で、最近医学雑誌にアクセプトされました。 内容は簡単にいうと、41万人にApple Watchをつけていただき…

心不全の新規治療薬【コララン】発売

11月19日付けで、心不全のあたらしい治療薬が発売になりました。 心不全の新規治療薬は何年ぶりでしょうか。 心不全とは、心臓が何らかのダメージを受けたあと(例えば心筋梗塞を起こしたあと)に、ポンプとして血液を送り出す機能が落ちることで、血液の循…

夜勤は【がん】のリスク

繰り返す夜勤によって、一日の生活パターンを一定にさせることが難しい職業は少なくありません。 夜勤をする労働者の割合は20%程度といわれています。 夜勤による生活パターンの変化(日勤になったり、夜勤になったりする勤務交代を伴ったもの)が、さまざ…

高いサプリメントを飲んで、処方薬を嫌うのはなぜか

薬は飲みたくない、と思うのはなぜなのでしょう。 薬は副作用がありそうだからでしょうか。 一回飲んだらずっと飲むんですよね?それは嫌です。と言いながら、高いサプリメントを買って毎日飲んでいる方は結構多いと思います。 一回飲んだらずっと飲まなけれ…

睡眠障害とうつ病(当直・夜勤制度の限界)

睡眠とメンタルについて、少し調べてみました。 上図は各国の平均睡眠時間のデータです。男女とも日本は睡眠時間が少ない傾向にあります。 睡眠がからだの修復や免疫に関与していることは前回も触れましたが、インフルエンザウイルスの感染について。 睡眠が…

精神疾患には睡眠が関与している説を考える

睡眠不足がうつ病などの精神疾患の原因となっているという話題です。 精神科専門の先生方が、睡眠不足がうつ病などの精神疾患の原因となっている。抗精神薬を内服するまえに、睡眠を整えることが大切だというのです。 睡眠を整えるとは、睡眠時間の量と質の2…

医療の地域格差がとんでもないレベルになっている

医療を提供する側の医療への関心と、医療サービスを受ける側の医療に対する期待と信頼、また、その地域での歴史を非常に強く反映するのが、医療の質です。 日本の医療には数多くのガイドラインという、診療を行っていく際の、ある一定の決まりのようなものが…

若年性突然死を見て改めて思う【できることはやっておく】ことの重要性

最近、脳卒中、心臓病の予防の話題ばかりになってしまい、自分でも若干飽きてきていたところでしたが、今朝、34歳の俳優の方が虚血性心疾患によって亡くなったという大変残念なニュースが飛び込んできました。 この年齢で虚血性心疾患(急性心筋梗塞、不安定…

人生100年時代を生き抜く~本物のアンチエイジングとは~

人生100年時代になりそうです。 前回までは、国が法制化した【脳卒中・循環器病克服対策】についてご紹介しました。 この法制化の目的としては、 a) 脳卒中・心臓病の発症には予防が可能な要素が多くあるが、それを国民全体に周知できていない。脳卒中・心臓…

脳卒中・心臓病予防は国家的事業

前回、平均寿命と健康寿命は大きく異なるものだという話題をしましたので、その流れで脳卒中と心臓病対策は既に法律化され、国家的に取り組む課題に決まった、という内容も補足的にご紹介しておきます。 個人的に重要な図だと考えていまして、再掲します。 …