予防医療のランダム・ウォーカー

内科専門医のblog 〜予防に勝る治療なし〜

自宅筋トレにデッドリフトの要素をどのように導入するか

筋力トレーニング(レジスタンストレーニング)では、

 

ベンチプレス、デッドリフト、スクワットという三種類の筋力トレーニングが三大トレーニングとされています。

 

私の筋力トレーニング、有酸素運動はあくまで心臓病に対するリハビリテーションの知識・経験から派生してきたものです。

 

そのため、

 

基本的には自宅でできる範囲で、自体重トレーニングを患者さんにもお願いしていますし、自分自身もメニューを更新しながら継続しています。

 

 

心臓リハビリテーションの現場では、

 

ふくらはぎは第二の心臓というように、下肢の筋力が増加することによって、心臓に下肢から戻る静脈血の戻りがスムーズになるという目的から、

 

また、転倒防止の観点から簡便に継続できるという視点から、スクワットの要素が重視されている傾向にあります。

 

両サイドに椅子を置いて行えば、転倒のリスクも減りますので、これはこれで理にかなっているのですが、

 

運動自体が単調になるのと、使用できる筋肉に限りが出てしまいますので、

なんとか他の要素も患者さんに提供したいとずっと考えつつ、ここまで来てしまいました。

 

今回、三大トレーニングのうちの、デッドリフトの要素を自体重トレーニングで導入できないかを考えてみました。

 

デッドリフトとは、足元の重りを両手で把持し、背中の筋力だけで上へ上げる運動です。

 

これを自宅で、しかも心臓病の方の目線でどう取り入れたらよいのかを考えました。

 

一番安全なのは、コピー用紙のようなA4サイズの用紙の束(もしくはあつい本など)を床に置き、それを両手で持って腰の力だけで持ち上げる方法が、一番危ない負荷がかからないかと思います。

 

コピー用紙の枚数によって負荷を変えられるので、その量は人それぞれですが、それでも30回も繰り返せば、それなりの負荷になりそうです。

 

前屈に制限がある場合などは、目の前に椅子を置いて、その上にコピー用紙の束を置いて行うのも一法です。

 

 

正確には自体重筋トレ、ではありませんが、

一応ここでは自宅で患者さんが簡便にできる、しかも安全に、というのが目的で書かせてもらいました。

 

他の方法もいろいろあるのですが、実際にやってみて転倒のリスク等を考慮すると、この方法が良さそうです。

 

自分でしばらく継続して、良さを確認できた段階で外来でリリースする予定です。

 

 

糖尿病と歯周病の密接な関係性

歯科というものは奥が深いもので、知らないことがたくさんあります。

 

心臓の手術前に、主に手術後の心臓内部の感染予防のため、歯科でう歯(むし歯)のチェックをしていただいたり、または、入院中の場合は、歯科医の先生に病棟に出張していただいたりしたことは今までにもありました。

 

最近の知見では、歯周病治療が糖尿病の治療になるという話題です。

 

機序としては、歯周病による口腔内の炎症が、インスリンという血糖を下げるホルモンの効果を弱めて、糖尿病のコントロールを悪化させるようです。

 

歯周病の治療を行っただけで、糖尿病のコントロールの指標のひとつとして使用されているHbA1cが改善したという報告があり、

 

今回改訂された糖尿病診療ガイドラインにも取り上げられました。

 

簡単にまとめると、

 

歯周病は、疫学的に糖尿病悪化に関連しており、歯周病の重症度が高いほど糖尿病のコントロールが不良になる。

 

糖尿病(1型糖尿病除く)では、歯周病治療によって血糖が改善する可能性がある。

 

 

以上のことから、

 

糖尿病の治療を受けている方全てではないにしても、

多くの方々が、歯周病を治療しさえすれば糖尿病ではなくなる可能性がある

 

ということでもあるように思えます。

 

歯周病を治療して、今までの食事療法と運動療法を続けたら、糖尿病を脱した、なんてことが起こる可能性があるということです。

 

振り返ってみれば、歯周病治療をされた方の中にそういった経験があったようにも思えます。

 

糖尿病のリスクから解放されるということは、かなりの病気から解放されるのと同義です。

 

早速明日からの診療に活かそうと思います。

 

 

※追記します

コメントをいただきありがとうございます。

少し難解な内容になると考え省略しましたが、歯周病による炎症によってインスリンの効きが悪くなる(インスリン抵抗性)が糖尿病増悪の機序と言われています。

補足していただき、ありがとうございます。

【心臓手術前に受けた説明を、大半の患者さんは理解していない】のは本当か

手術前の説明をほとんどの人が理解していない、という話です。

 

【心臓手術前に受けた説明を、大半の患者さんは理解していない】という内容の論文がありました。

 

 

心臓カテーテル治療を受けた326名の患者さんに対する調査結果です。

 

326名の内訳は緊急治療が159名、待機的治療が167名です。

 

まずこの内訳をみると、急性心筋梗塞で本当に心臓カテーテル治療が必要だったのは、約半数ということがわかります。

(急性心筋梗塞には心臓カテーテル治療は必要、安定型狭心症には不要です)

 

待機的に治療ができた、という167名は安定型の狭心症ということです。

(厳密には不安定狭心症をいくらか含んでいる可能性はありますが、少数です)

 

これらの患者さんに対して術前に行った手術の説明が、あとから確認したところ、

 

患者さんの40%以上が内容を理解していなかったという結果です。

 

さらに、60%の人が心臓カテーテル治療で病気が治ると誤認していました。

 

また、待機的に心臓カテーテル治療を行った95%もの患者さんが、「今後の心筋梗塞のリスクが下がる」91%が「寿命が延びる」と認識していたというのです。

 

カテーテル治療にはそのような効果はありません。

 

今回の結果は、要するに治療の内容に関しても、その時の病態についても、ほとんどの人がわかっていなかったということになります。

 

緊急で治療を受けた159名は、一分一秒を争う中で説明を受けていますから(そうでないと急性心筋梗塞はどんどん死亡率が上昇します)、説明を十分に理解していなかったというのは、ある意味仕方ないことかもしれません。

 

ただ、問題なのは、治療まで十分時間のあった待機的治療を受けた167名が、このように病気を誤解しているということです。

 

おそらくどの循環器医も、

 

カテーテル治療が成功すればもうこの病気にはなりませんとか、寿命が延びますよ、病気自体が治りますよ、とは言っていないはずなのですが、

 

十分な説明がないまま、治療後のきれいになった血管をこのように見せられると、

 

関連画像

 

「ああ、もう良くなった」

「今までの積み重なった病気のリスクはこれでゼロになった」

「これでもう心臓は問題ない」

 

と思ってしまうのは、ある意味で当たり前かと思います。

実際、治療後にそんなことをおっしゃる方も少なくありません。

 

ここで本当は、

こういった病気は全身の動脈硬化が原因なので、

今回はその一部を治療しただけで、ほかの部分からまた狭心症心筋梗塞を発症する可能性は高いのです、と説明し、しっかり理解していただかなければならないのですが、

 

なかなかご理解をいただけないことも多いのが現実です。

 

逆に、

 

こういった説明を理解していただける方は、間違いなく週3回の運動治療(運動療法)に参加してくれます。

 

結局、個人個人の性格とか、理解度の問題で、その後の人生は大きく変わってしまうのが現実ですが、十分に説明しない医療サイドの責任もあると思います。

有酸素運動・レジスタンストレーニングそれぞれの特徴を再確認する

あらためて、exerciseの有効性をまとめてみたいと思います。

 

わたくしは、心臓病の運動療法を専門にしており、いままでに様々なケースでの心臓リハビリテーションを経験してきました。

 

狭心症心筋梗塞後の運動療法はもとより、重症心不全、なかには心臓の機能が著しく悪く、人工心臓を装着しなければならないケースでの運動療法の経験もあります。

 

心臓病のケースに比べれば、一般の未病(まだ病気を発症していない場合)の方の運動に関しては、比較的安全に行えるケースが多いと思いますので、ひとりでも多くの人に始めてみていただきたいと思います。

 

運動は、薬物療法のような副作用の心配がなく、同等の効果が得られる点ですばらしい治療法です。

 

有酸素運動の特徴】

1、最大酸素摂取量の増加効果=心肺機能の改善効果

2、心拍出量の増加効果

3、安静時心拍数の低下効果

4、インスリン感受性の改善効果=糖尿病の予防・治療

インスリンとは血糖値を下げるホルモンです)

5、中性脂肪の低下効果、HDLコレステロール上昇効果

6、収縮期血圧の低下効果

7、自律神経機能の改善効果

8、狭心症心筋梗塞などの発生率の減少効果

9、心不全増悪による入院の減少効果

10、生命予後の改善効果(さまざまな死亡、心臓死の減少)

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11、大腸がん(結腸がん)予防効果

12、肥満改善効果

13、骨密度改善に対する効果

14、精神疾患(うつ、ストレス、不安)改善効果

など

 

※心肺機能を大きく改善させるが、筋力増加に対する作用はほとんどない

 

 

有酸素運動の良さは、科学的な根拠が証明されているものだけでもたくさんあります。

これ以外にも細かなことを挙げていけばきりがないです。

 

以前ご紹介したISCHEMIA試験以外でも、狭心症に対してカテーテル治療と運動療法で比較したものでは、カテーテル治療よりも運動療法をした群では結果が良かったとされるデータもあります。

 

有酸素運動とは、一般的にはウォーキングとぺダリング(自転車こぎ)になります。

 

 

レジスタンストレーニングの特徴】

1、筋力・筋持久力の増加効果

2、骨密度改善効果

3、インスリン感受性の改善効果

4、肥満改善効果

など

 

レジスタンストレーニングも一般的には有酸素運動と同等の効果を見込めますが、一番の相違点は、

 

レジスタンストレーニングは筋力増強効果はあるが、心肺機能は向上しないという点です。(有酸素運動には筋力増強効果はありません)

 

 

どちらが優れているのかということではなく、それぞれの良さを知識として知って、運動を継続することが重要です。

 

 

肥満を改善させるため、ダイエット目的で運動をしたいという方が多いと思いますが、その場合は、下半身の筋力トレーニングから開始するのが一番かもしれません。

 

体重が標準よりはるかに多くなっている場合は、歩いただけで膝関節に負荷がかかりますから、膝周囲の筋力を増強するのは理にかなっています(変形性膝関節症の予防)。

 

脚が太くなりそうで嫌だ、という人は多いですが、脚を太くするまでにはかなりの筋力トレーニングが必要ですから、始める前から心配する必要はないと思いいます。

 

運動は目的が何であれ、最終的にはさまざまな病気の予防につながっているということははっきりしています。

 

運動をはじめる、継続する動機はなんだっていいのです。

 

 

有酸素運動レジスタンストレーニング以外にも、最近になってヨガの有効性を示すデータも出てきています。

 

良く精査して、またご紹介したいと思います。

運動メニューを改めて見直す

自分で決めた運動習慣を継続して、ちょうど一年になります。

 

仕事の都合などで、どうしてもできなかった日はありましたが、

 

それでも、週3回の運動でも効果があることを考えれば、十分やり抜いたと思っています。

 

 

私事ではありますが、

自分の世代はちょうど若い頃に、狭心症心筋梗塞カテーテル治療や、徐脈(脈が遅すぎて支障をきたす)に対するペースメーカ治療、不整脈に対するカテーテル治療が非常に伸びていた時代を過ごし、それらに明け暮れる毎日でした。

 

そうした日々を過ごすうちに、

 

特に、狭心症心筋梗塞の患者さんは治療をしても、少しするとまた治療が必要になることに気がつきました。

 

これは、根本的に何かを変えないと、狭心症心筋梗塞という病気は簡単には克服できない、ということを意味していました。

 

狭くなった血管を、カテーテルでいくら拡張させようが、ステントという金属の金網で補強しても、本当に治療したことにはなっていないということにようやく気がついたのが医師6年目。

 

ちょうど当時在籍していた病院が運動療法で有名な病院であり、

 

狭心症にはカテーテル治療ではなく運動療法で治療する、心筋梗塞も治療直後から運動療法が必須である、という指導を直に受け、

 

運動療法で患者さんが見違えるほど良くなり、再発のため戻ってくるということがなくなるということを、目の当たりにしました。

 

 

結局、狭心症心筋梗塞も、その始まりは高血圧や糖尿病、コレステロール異常がスタートになっているのです。

 

 

ですので、そこを改善しないと、いくら狭い血管を物理的に拡張させても、また他からどんどん病変は出てきます。

 

 

カテーテル治療の場面で、綺麗になりましたね、良かったこれで治りましたね、というのは短期的な視点で見れば正しいのかもしれませんが、長期的には嘘です。

 

このことをはっきり言っている医療関係者が少ないので、患者さんも治ったと勘違いしてしまいます。

 

本当の治療はカテーテルが終わった後からだというのに・・。

 

 

このように、狭心症心筋梗塞後、また重症心不全運動療法の効果を実際目の当たりにし、

 

これは自分にも使えるし、まだ重症化していない方々の予防に使うべきだと考えました。

 

 

そこで、わたくしが自分に一年前に課したメニューを示します。

これは患者さんにもお願いしたメニューになります。

 

まず有酸素運動ですが、これは一日30分のウォーキングを課しました。

 

レジスタンストレーニング(筋トレのこと)は

1、壁に手をついて、踵上げ30回(可能なら朝と夜)

2、ハーフスクワット20回(可能なら朝と夜)

 

これだけです。

 

ポイントは最小限の負担で、自宅でできることです。

継続できる範囲で行うことが結局は最終的に効いてくると思います。

 

メニューをこれに決めたのは、

重症心不全の初期の心臓リハビリに指導している内容を多少修正したものだったので、だれにでも継続可能と判断したためです。

 

 

一年間継続するうえで、上半身のレジスタンストレーニングも追加した時期はありましたが、

 

上記した1と2で下肢の安定性をしっかり獲得することと、下半身の筋力が増加すれば毎日のウォーキングがさらに効率が高くなるため、結局はこの1,2を愚直に継続する方針としました。

 

 

ただ、途中から負荷が物足りなくなってきまして、最終的には

 

踵上げは一日100~350回

ハーフスクワットは100~250回

途中からフルスクワットを追加して一日30回

 

時間的に余裕があれば軽めの腹筋

 

という基本形を守りながら、

 

途中から有酸素運動の負荷強度を上げたかったので、ウォーキングではなく、縄跳びに変更。

(やはり有酸素運動も多少負荷がかからないと、高い効果が得られないと思ったからです。ただし、有酸素運動の基本はウォーキングやぺダリング(自転車こぎ)ですので、一般的にはそちらをお勧めします)

 

 

縄跳びは30回から開始しましたが、段階的に回数を増加させて、今は一日150回を最低ラインに設定して継続中です。

 

 

とりあえずの一年間の記録ですが、

 

睡眠時間(平均):7時間8分

踵上げ:46120回

ハーフスクワット:35225回

フルスクワット:3425回

腹筋:16651回

 

 

今年は、今まで継続した下肢の筋力トレーニングを維持しながら、上半身の強化に移っていけるようにしたいと思います。

 

また、トレーニングの成果を科学的に評価できる記録についても考えたいと思います。

 

 

仕事の性質上、どうしてもジムに通うことが難しいのと、もともと心臓リハビリテーションに携わってきて、独自でメニューを組んでいたこともあって、あくまで自己流かつ自重トレーニングを中心とした運動療法を継続していきたいと考えています。

 

食事内容、タンパク質摂取の方法についても再考したいと思います。

 

 

自宅で行う運動は比較的簡単です。

ただ、簡単だからといって効果が低いという訳では決してありません。

 

ジムなどに通った方が「やった感」はでると思いますが、しっかりした指導がないのであれば、費用対効果はそれほど高いと思えません。

(移動時間を含めて)

 

運動には、一般的に考えられているよりも遥かに高い効果があります。

 

自分でできるメニューから是非やっていただければと思います。

 

認知症は老化の最大の原因?

唐突ですが、高血圧は認知症の原因となります。

 

75歳以上の高血圧患者199名の臨床研究になります。

 

収縮期血圧(上の血圧)を130未満にしっかりと下げたグループと、145未満に甘めに下げたグループで、3年間の比較を行ったそうです。

 

 

結果、血圧を130未満に下げたグループでは、MRIで測定した大脳の微小血管障害が少なく、認知機能は差を認めなかったが、運動能力は明らかに高いという結果でした。

統計学的有意差あり)

 

 

大脳の微小血管障害とは、高血圧によって脳の中の小さな血管がダメージを受けた、という認識でよいかと思います。

 

 

上記したデータは75歳以上に対するデータでしたが、今までにも50歳以上での調査で、同様の結果が出ています。

 

その際には高血圧のコントロール次第では、認知機能まで異なるとされていました。

 

 

血圧を下げると、 認知機能が低下しない、運動能力が低下しない。

 

機能的な老化を予防できるという結果です。

 

 

血圧は130/80未満あたりを厳守した方が良さそうな結果が結構たくさんあります。

 

日本でも次のガイドライン改訂では、高血圧の基準が現在の140/90以上からさらに下げることが予想されます。

 

 

診療中に最近特に思うことなのですが、

 

まずは、ご高齢でも外来に自分の足で歩いてこられる方が以前より明らかに増加しました。

 

そして、ご高齢でも、認知機能がしっかりしている方が以前よりかなり増えました。

 

さらに、これらを受けて

 

実年齢が90歳でも見た目年齢が78歳くらいに見える、といった、年齢に良い意味でのギャップがある方が増加しました。

 

これは、今回ご紹介した高血圧のコントロールが昔よりも徐々に良くなっているということも反映しているのでしょうし、

 

それ以外にも、衛生状態の改善や栄養状態の変化、そして、運動習慣の有無なども関連しているはずです。

 

運動習慣の有無によっても認知機能は異なるといったデータもあります。

 

遺伝的要素も大きく関与しているとは思われますが、遺伝的要素だけで説明できないように思います。

 

 

年齢の定義上は高齢者に分類されても、動ける高齢者は昔のイメージの高齢者とは全く異なっています。

 

時代遅れの60歳よりも、健康にある程度気をつかっていて、運動習慣もあって、自分の足でしっかり歩いている80歳の方が若いような印象を受けることが本当に多いです。

 

ただ、そこには認知機能がしっかり残っているかどうかが大きく関与していると思います。

 

自分のあたまで考えることができると、運動しよう、血圧気をつけよう、体重はどうだろうと、結果的に健康に相当気をつけることができますが、

 

認知機能が低下してしまうと、考えることができなくなっている可能性があります。

 

そういった意味で、認知機能を低下させないような習慣をつけること、病気を発症しないことが、一番の認知症対策であり、アンチエイジングだと思うのです。

 

結局のところ、アンチエイジングだといって見た目を修正しても、内部から崩壊している方もいないわけではありません。

 

同じ方向を向いていないと、治療はうまくいかない仮説を考える

今回の内容には、まったく科学的な根拠はありません。

 

データも何も(たぶん)ありません。

 

データがあるのかどうか調べてもいないです。

 

あたりまえの内容なのですが、

手術であっても、薬物療法であっても、運動療法であっても、

 

治療を受ける側(患者さん)と治療者(医師、看護師、薬剤師などのスタッフ)の、その治療に対する姿勢、向き合い方が同じ方向を向いていないと、うまくいかないことが出てくるという、個人的な経験の話です。

 

循環器内科という分野は、他の内科よりも手技的に求められることが多いです。

 

 

狭心症・急性心筋梗塞に対するカテーテル治療(経皮的冠動脈形成術)

徐脈(脈がゆっくりになる)に対するペースメーカ植え込み術

致死性不整脈心不全に対する植込み型除細動器、両室ペーシング植込み

不整脈に対するカテーテル手術(カテーテルアブレーション)

末梢動脈疾患に対するカテーテル治療

弁膜症に対するカテーテル治療

(以前、なぜ心臓弁膜症はCMが多いのかという内容で少しご紹介した治療です)

心房中隔欠損症に対するカテーテル治療

左心耳閉鎖デバイスによる左心耳閉鎖術

 

 

など、挙げてみればたいした数はありませんが、

 

それでも一般的な内科とは一線を画した診療科だと思います。

 

ちょうど自分が経験してきた治療というのも成熟期を過ぎ、特に狭心症カテーテル治療に関しては、データ上もう不要なのではないかと言われるまでになりました。

 

しかし、上記した治療の多くは、これからも残りながら進化を続けていくものばかりです。

 

治療はうまくいくことがほとんどです。

 

しかし、どの治療にも予期せぬ合併症は必ず出てきます。

 

今回挙げた治療の上から4項目についてはそれなりに数を経験させてもらい、メインオペレーターとしてたくさん患者さんに治療をご説明し、手術数をこなして感じたのは、

 

患者さんと医療者が、ひとつの治療に対して、お互い理解して(医療者側はわかりやすく説明して理解度を高める努力をし)納得していないと、そういう時に限って合併症は起こりうるということです。

 

患者さんには、少しでも納得していなかったり、疑問がある段階では絶対に侵襲的な手術はお勧めしないことにしています。

 

納得しているかしつこく聞くこともあれば、やはりその人の納得具合は顔には何か出ていると思っています。

 

少しでもそういった空気を感じた場合には、治療はおすすめしません。

 

(とはいっても、急性心筋梗塞や徐脈の治療に限っては時間との勝負なので、ある程度、もうやります的な説明をさせていただいていますが・・)

 

まあ、当たり前といえば当たり前なことですが。

 

 

内服薬も一緒です。

 

疑問があったり、納得していない場合、医療者を信頼しきれていない場合は、当然内服を自分で止めたりしてしまう人が出てきますから、治療はうまくいきません。

 

また、そういう場合に限って、やはり薬の副作用などが出やすい気がします。

 

 

冒頭にも書きましたが、今回の内容にまったく科学的な根拠はありません。

 

あくまで自分の経験ですが、この経験則をこれからも崩す勇気は自分にはありません。

 

データはありませんが、たぶん相関があると思います(自分の中だけは)。

 

みなさんもこういった経験則をお持ちではないでしょうか。